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皿洗い、書類のファイリング、データ入力……家庭や会社や地域社会を回していくうえで、不可欠だが単調なタスクは無数にある。あまりにも退屈で、作業が長続きしないことも少なくないが、その理由はモチベーションが足りないからではなく、そのタスクに集中力が求められていないからだと、筆者は指摘する。退屈なタスクを最後までやり通すには、集中力を要する他の作業と組み合わせることが有効だと、一連の実験結果から明らかになった。本稿では、退屈さを和らげ、持続性を高める「タンジェンシャル型没入」について論じる。


 私たちは皆、自分が夢中になれることをしながら毎日を過ごしたいと思っている。しかし現実には、やらなければならない退屈な仕事が山のようにある。

 皿洗い、書類のファイリング、データ入力……単調だが、家庭や会社や地域社会を回していくうえで不可欠なタスクが無数に存在する。このように、やらなくてはならないが、けっして胸がときめかないタスクを、誰もが抱えているのだ。

 当然ながら、これらの作業に耐えることは、それが必要だとわかっていても容易ではない。では、退屈な仕事を最後までやり抜くために、何が必要だろうか。

 研究者はさまざまな角度から、この問題に取り組んできた。どうすれば私たち自身の、あるいは大切な従業員の粘り強さを養うことができるのか。その答えを探し続けている。研究では、人はみずから進捗状況を確認できる時、何らかの報酬を得られる時、あるいはタスクを楽しめる状態の時、その作業を長時間続けられることが示された。

 このような研究結果は、商品開発や政策策定に直接影響を与えている。その例として、電動歯ブラシメーカーが歯ブラシにタイマーをつけるようになったこと、従業員に運動を奨励するために企業がこれまで以上にインセンティブを提供するようになったこと、マネジャーが従業員の仕事をもっと楽しいものに変えようとさまざまなゲーミフィケーション戦略を実行していること、などが挙げられる。

 だが、筆者の最近行った研究では、高い集中力を必要としないタスクをこなす際、よりよいアプローチがあることが示唆された。筆者が共同研究者とともに、被験者2000人以上を対象に一連の実験を行った結果、作業が長続きしない理由は多くの場合、モチベーションが足りないからではなく、そのタスク自体に集中力が求められていないからだと明らかになった。

 持続性の向上を狙った戦略を設計する際、仕事そのものを部分的に変えようとすることがあまりに多い。しかし、皿洗いを心躍るタスクに、あるいは知的好奇心をくすぐるタスクに変えようとするのには限界がある。

 時として、作業の退屈さを和らげるための試みを延々と続けるよりも、集中力をより必要とする他の作業と組み合わせるほうが効果的な場合がある。筆者らは、この概念を「タンジェンシャル型没入」(本来とは別の対象への没入)と呼んでいる。

 なぜ、それが功を奏するのだろうか。基本的に、人間の脳は何かに没頭するようにできている。退屈さを感じるのは、集中力がたいして必要とされないタスクを行っている時であり、それゆえに作業が長続きしなくなる。しかし、それほど集中する必要のない作業を行うと同時に、自分が没入できる別の活動があることで、その活動が余分な集中力を吸収し、退屈さが薄れ、持続性が高まるのだ。