『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』(DHBR)では毎月、さまざまな特集を実施しています。本稿では、DHBR2022年7月号特集「顧客体験を変える」への理解をさらに深めていただけるよう、関連する過去の論文をご紹介します。

 DHBR2022年7月号の特集は「顧客体験を変える」。コロナ禍の長期化により、消費者の思考や行動が大きく変化し、これまで以上に大量の顧客データと人工知能(AI)を活用して、カスタマージャーニーを最適化することが求められるようになった。本特集では、企業が顧客体験をどのように変化させていくべきかを考える。

 フィットネスクラブに通う人の最終目的は、器具やトレーナーを利用することではなく、体調を整えることにある。病院に行く最大の理由は、薬の処方、診察、治療のためではなく、健康になることだ。

 我々はどれほど希望や野心に満ちあふれていても、自力で大きな変化を成し遂げるのは難しく、顧客が「新しい自分」に変わろうとする過程を企業が支援する「トランスフォーメーション・ビジネス」の可能性は大きい。

 テキサスクリスチャン大学のランス A. ベッテンコート准教授らによる「顧客とともに顧客の『なりたい自分』を実現する」では、顧客とタッグを組んだジャーニーに向けて注意すべき点、そして製品やサービス、体験をどのようにデザインしていくべきかを説く。

 パーソナライズされたシームレスな顧客体験は、いまやあらゆる業界で企業戦略の中核に置かれている。

 高品質な顧客体験をつくり上げるには、顧客データを大規模に取得・分析し、AIを用いてカスタマージャーニーを最適化する能力が必要となる。そのため、競争優位性を持つのは大手テック企業と考えられてきたが、実は規模の小さいチャレンジャーブランドの中にも、革新的なデータをもとに斬新な顧客体験を設計しているケースがある。

 ハーバード・ビジネス・スクール上級講師のデイビッド C. エデルマンらによる「顧客体験はAIの力で進化する」では、このような最先端企業が高品質な顧客体験をつくり上げるために、「インテリジェント・エクスペリエンス・エンジン」をいかに構築しているのか、事例を挙げて紹介する。

 オンラインのみを使い、ソーシャルメディアで販促し、消費者と直接取引するD2Cブランド。このビジネスモデルはミレニアル世代を惹き付けて、グロッシアーやキャスパー、ワービー・パーカーなど、いくつもの成功ブランドが生まれた。しかし、その規模が拡大するにつれ、初期のビジネスモデルが限界を迎えているところも多い。

 ハーバード・ビジネス・スクールのV. カストゥーリ・ランガン教授らによる「D2Cブランドが成長し続けるための4つの原則」では、こうしたD2Cブランドが成功を収めた要因が、従来のマーケティング手法から抜け出した独創性にあったことを解説したうえで、さらなる成長を続けるための4つの原則について説いている。

 コロナ禍の長期化により、消費者の考え方や行動が大きく変化している。このような時代でも、時価総額を増大させているグローバル小売企業を分析すると、いち早く消費者の新しい行動様式やニーズをとらえ、積極的にオンラインとオフラインの融合(OMO)に取り組んでいることがわかる。

 言い換えれば、顧客起点のビジネスモデルを確立できていることがその成功要因といえるだろう。つまり、これから日本の小売・消費財企業が同様に成長を遂げるには、顧客を起点にしたOMOモデルへの転換が急務である。

 マッキンゼー・アンド・カンパニー・ジャパンの櫻井康彰氏らによる「日本企業のビジネスモデルを顧客起点に転換する方法」では、コロナ禍で成長を遂げるグローバル小売企業の成功法則を探り、日本の小売・消費財企業が飛躍するためのヒントを提示する。

 ベイン・アンド・カンパニーのフレッド・ライクヘルドらが提唱した「ネット・プロモーター・システム」は、顧客ロイヤルティを可視化するコンセプトとして急速に広まった。しかしながら、その人気が高まるにつれて、企業によっては回答のバイアスがかかり、調査結果の信頼性が損なわれるケースも生じている。

 そこで筆者らは、「ネット・プロモーター3.0」の中で、新たに「プロモーター獲得成長」を提示する。これは、既存顧客からの継続的な売上げと、既存顧客の紹介による新規顧客の購買を合わせた売上金額が、自社の売上高全体においてどの程度の割合を占めているのかを示すものである。

 広告や販促活動などのマーケティング活動に依存せず、自社の優れた顧客体験を通して得られた顧客ロイヤルティによって、どれほど実際の財務的成果につながるのかを計測することできる。

 2022年に創業90周年を迎えるレゴグループ。日本では1960年代に販売を開始して以降、長期にわたって子どもからの支持を集め、親子2代でレゴブロックを楽しむ層も多くいる。「知育玩具」のブランディングで、日本市場を切り拓いた同社だったが、それゆえに、レゴブランドが大切にする価値や体験を届けられず、苦心した経験も持つ。

 レゴジャパン代表取締役の長谷川敦氏へのインタビュー「理想のレゴ体験は子どもを育み、ビジネスにも成長をもたらす」では、レゴジャパン代表取締役の長谷川敦氏に、レゴブランドが大切にする価値は何か、そしてその価値を届けるために、どのようにカスタマージャーニーを変えたのか話を聞いた。