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温室効果ガス(GHG)排出量の増加に伴い、気候変動問題はますます深刻化している。この問題の解決に向けて、企業はGHGプロトコルを採用し、自社がいかなる環境負荷を与えているかを報告するようになった。しかし、このシステムには欠陥があると筆者らは主張する。本稿では、その欠陥を明らかにするとともに、脱炭素社会を実現するために、既存の炭素会計をどのように見直すべきかを論じる。


 ロッキーマウンテン・インスティテュートの報告によれば、平均的な企業のサプライチェーンから生じる温室効果ガス(GHG)の排出量は、企業の保有資産とオペレーションを通じて直接排出される量の5.5倍に及ぶ。

 したがって、GHG会計のシステムが効果的であるためには、各企業のサプライチェーンにおけるカーボンインパクトを正しく測定し、より気候に優しい製品仕様と購買判断を促すために透明性とインセンティブを提供する必要がある。

 筆者らが最近『ハーバード・ビジネス・レビュー』に寄稿した論考「気候変動の会計学」では、現在の炭素会計システムの主流である「GHGプロトコル」が、この重要なポイントをいかに見失っているかを指摘している。企業に対して、サプライチェーンの川上と川下で排出量の当て推量を許しているからだ。

 この欠陥に対処すべく筆者らが紹介したのが、棚卸資産と原価の計算ですでに確立された手法を基に、企業のサプライチェーン全体に及ぶGHG排出量を正確に測定する「E負債」(E-liability)という会計システムである。

 論考を発表した後、企業幹部やコンサルタント、規制当局や基準設定機関と、E負債システムについて何度も話をした。その多くは、このような手法がもっと早く導入されていないことへの不満を表明した。

 本稿では論考の補足として、GHGプロトコルに内在する基本的な欠陥について述べ、なぜ現状のまま用いられているかを説明する。また、気候変動に関する国際協定の多くに広く組み込まれているこのプロトコルを廃止するのではなく、堅牢な炭素会計へと変えるための道筋を提案する。

 結論部では、正確なGHG会計によってどの企業が最も恩恵を受ける立場にあり、E負債システムの早期導入者になれるのかを特定する。