Yaroslav Danylchenko/Stocksy

多くの従業員がメンタルヘルスの問題に苦しむ中、企業はその対策として、彼らがジムを自由に利用できたり、有給休暇を取得できるようにしたりと、セルフケアを重視したウェルネスプログラムを提供している。しかし、ウェルビーイングは本人の努力だけで向上するものではなく、他者との関わりを通じて実現するものだ。セルフケア重視のプログラムは精神的健康を改善するどころか、むしろ悪化させる危険性もある。筆者らは、従業員のメンタルヘルスの問題には集団として取り組むべきだと主張し、組織が採用すべき具体的な解決策を紹介する。


 組織が、新型コロナウイルスのパンデミックによって悪化したストレス、バーンアウト(燃え尽き症候群)、メンタルヘルスの危機への対応に奔走する中、多くの企業のウェルネスプログラムは、ジムの会員、瞑想アプリ、あるいは有給休暇といったセルフケアのサポートに焦点を当てている。

 従業員のウェルビーイング、レジリエンス、精神的健康に関する研究者として、筆者らはその純粋な懸念には同意する。しかし、セルフケアを重視するあまり、従業員のウェルネスを支援するどころか、むしろ損なってしまうのではないかという懸念を強めている。

 問題の核心は、人間のウェルビーイングは一人で実現できるものではないということ、すなわち精神的健康は他者への愛情や他者からの受容に根ざしていることにある。私たちは本質的に、社会的な動物なのだ。実際に最近研究で、他者との断絶を感じることは、喫煙、過度のアルコール摂取、運動不足と同じくらい重大な健康リスクであると示唆されている。

 人と人とのつながりは、ストレス、不安、バーンアウトなど、職場の悩みに対処するうえでは特に重要だ。組織が個別の解決策を提示すると、従業員にメンタルヘルスの問題は自己責任であるというメッセージを送ることになりかねない。

 さらに悪いことに、その結果として、他者との断絶が自己増幅される。従業員が苦痛を自分だけで管理するようになると、不安と羞恥心の破滅的なサイクルに陥り、真のつながりを育むことがいっそう困難になる。このようなパターンは、自主性や独立性を尊重する国や組織の文化を通じて悪化することが多い。

 まとめると、組織ではさまざまな講座やモバイルアプリを使ったウェルネスの取り組みが行われているが、サポートという名の下で、従業員を目に見えない形で見捨てる恐れがある。その結果、孤独やメンタルヘルスの問題が蔓延し、バーチャルワークによってそれらがさらに悪化するのだ。

 筆者らは職場での苦痛に対応するにあたり、まったく異なるアプローチが必要であると主張している。「セルフケア」に重点を置くのではなく、「相互にケアし合う」ことが必要なのだ。

 それは、従業員の苦痛を個人の問題ではなく、集団の問題として捉えることから始まる。そして、「リレーショナルポーズ」(関係構築の小休止)を設け、促進する。このアプローチによって、組織は真のウェルビーイングのために、ひいては業務効率を高めるために、より実質的かつ永続的な基盤を築くことができる。