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人手不足の問題が世界規模で拡大する中、企業は新規採用者が新たなポジションでいち早く活躍できるよう、オンボーディングに力を入れている。しかし、職務に馴染むまでの時間が少なく見積もられることが多く、十分に実施されているとはいえないのが現状だ。さらに、新規採用者に必要な社内ネットワークを築く機会も提供されなければ、オンボーディング体験の質は低下し、定着率の向上は望めない。本稿では、オンボーディングプロセスを戦略的に設計するために必要な3つのステップを紹介する。


 大退職時代(グレート・レジグネーション)というと、たいていは米国のオフィスワーカーを中心に語られるが、人手不足の問題は世界規模で拡大している。多岐にわたるセクターと職種で、働き手が不足しているのだ。中南米や東欧、そしてアジアでも、「熟練」労働か「単純」労働かを問わず、労働市場は乱気流のまっただ中にある

 このように世界の労働市場が変化し続ける現在、従業員に対して積極的に投資を行い、重要な人材を定着させようとする企業は、オンボーディングに対する投資を惜しまないはずだ。

 オンボーディングの目的は、新規採用者が活躍できるよう準備を整え、新しい職務に馴染むまでの時間を短縮することにある。ただし、最終目標を念頭に置き、戦略的にオンボーディングプロセスを設計しなければ、その効果は出ない。

 リモートワークやハイブリッドワークの台頭により、オンボーディングはいっそう難しいものになってきた。2020年のワーカブルによる調査では、HR担当者はパンデミック下の雇用に関する最大の課題として、リモートによるオンボーティングやトレーニングを挙げている。経営者も、このことを課題として持ち続けている。

 バーチャルな働き方に移行する前でさえ、3分の1以上の企業は、リモートにせよ、他の方法にせよ、構造化されたオンボーディングプロセスを採用していなかった。そのうえ多くの企業は、新規採用者がそれぞれの職務に熟達するために必要な時間を少なく見積もっている。

 平均的なオンボーディングプログラムの期間は90日だが、ギャラップの報告書「新規採用者のための卓越したオンボーディングジャーニーの創出」(Creating an Exceptional Onboarding Journey for New Employees)によれば、一般的に新規採用者が潜在能力を最大限に発揮するまで12カ月要するという。

 強固な関係は、脆弱な土台の上には築けない。人材の定着率を改善したければ、従業員のオンボーディング体験を改善する必要がある。

 ギャラップの調査によると、自社は新しいチームメンバーのオンボーディングを上手に行っていると答えた従業員は12%に留まり、残りの88%はオンボーディング体験を物足りないと感じている。

 また、2021年のプリンシプルズの調査では、HR担当者の94%が、パンデミック中に採用した従業員は社内でバーチャルな交流しかできていないと答え、そのうちの31%が従業員は同僚とつながりを持つのに苦労していると回答した。新規採用者がどの程度適応できているか、きちんと把握することさえ難しいという回答者も10%いた。

 オンボーディングの質が低いと、新たな職務に対する新規採用者の自信が失われ、エンゲージメントレベルが悪化し、どこかでもっと魅力的な新しいポジションを目にした時、そちらに移ってしまうリスクが高まる。それを踏まえると、このような調査結果は、特にリモートワークを採用している企業にとって重要である。

 一方、正式なオンボーディングプログラムを実施している企業では、新規採用者の定着率が50%高く、新規採用者の生産性も62%高い。さらに、ギャラップのオンボーディングに関する報告書によれば、ポジティブなオンボーディング体験をした従業員は、自信が増し、職務遂行能力も向上することから、職務に対する準備が整い、サポートされていると感じる割合が3倍近くになるという。