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中間管理職は、リーダーとして難しい立場に置かれている。上司からはパフォーマンスの向上を求められ、部下からは思いやりを示すよう要求され、両立困難なリクエストの板挟みにあっているのだ。中間管理職は、上司と部下からの矛盾する要求に、どのように対処すればよいのか。本稿では、3つのポイントを紹介する。


 筆者らは先頃の論考で、リーダーが思いやりと仕事の成果という矛盾する要求を課せられていることについて執筆した。その反響や、筆者らが世界中の企業と行っている仕事や研究から、このような緊張を最も強く感じている人の多くは中間管理職であることがわかった。彼らは、上からはパフォーマンスの向上を求められ、下からは思いやりを要求され、引き裂かれそうになっている。

 プライベートエクイティファンドの出資を受けているフィンテック企業で、カスタマーリレーションズ部門を束ねるジャスティン(仮名)は、そんな中間管理職の一人だ。業界全体が離職などによる人員減少に見舞われ、ジャスティンは従業員の士気を保ち、優秀な人材を維持することに苦労している。

 特に顧客関係管理のマネジャーが退職して、従業員は担当の取引先への対応で長時間労働が続いているが、それだけでなく個人的な問題も抱えているようだ。依存症と闘う10代の子どもがいる、親が入院している、賃貸住宅の契約が切れた。山火事で自宅が被災した従業員も数人いる。

 同時に、ジャスティンは上司たちから毎日のようにプレッシャーをかけられており、プレッシャーをかけている彼らも取締役会から突き上げられている。というのも、複数の主要な取引先で顧客満足度のスコアが急落しているからだ。

 ジャスティンのジレンマは典型例だ。上司からの要求も部下からの要求も、彼らが生きるビジネスの世界では当たり前に見られる。

 経営幹部が最も頻繁かつ直接的に接するのは、会社の業績に責任を負うステークホルダー(株主、取締役会、市場アナリストなど)だ。原則として、株主や取締役会は、リーダーの部下がどのように働いているか、それほど詳しく質問することはない。

 さらに、多くの経営幹部は、若手従業員が直面している問題の大きさや多様性とは遠い場所にいる。シニアリーダーが情報を得ようとしても、ほとんどの従業員が自分の弱さや傷つきやすさを見せることを恐れて、平静を装うものだ。

 トップリーダー自身が抱えている心理的なハンディキャップもある。研究が示す通り、権力は共感力を損なう。現場の従業員が抱えている問題に対しても、彼らが抱える問題に日々対処しなければならない中間管理職に対しても、共感が欠けるのだ。

 これらの要因が重なり、業績目標を達成することに夢中になって、現場で起きていることを考えれば、中間管理職に対して理不尽な要求をしていることに気づかない経営幹部が生まれる。

 ここで、世界中の現場で働く人々のことを考えてみよう。思いやりの必要性について言えば、誰もが問題やストレス要因(心身の健康、対人関係、家庭で果たすべき義務など)を抱えているが、現場の最前線で働く人々は、育児や介護の支援、家庭教師など、負担の一部を軽減するためのリソースがない可能性が高い。さらに、ある種のストレス要因(雇用の安定など)は、最前線で働く従業員のほうが大きいだろう。

 彼らの仕事観は特定のタスクに集中しがちで、自分の行動が会社の業績にどのような影響をもたらすかという感覚が、それほど明確ではない。つまり、ストレス要因が多く、それに対処するためのリソースが少なく、直属の上司がどのように、そしてなぜパフォーマンスの向上を要求して、自分にプレッシャーをかけるのか理解できずにいる。

 このような矛盾するプレッシャーに、中間管理職はどのように対処すればよいか。ここでは2つの行動に注目する。1つ目は、組織の「思いやりの能力」を高めること。思いやりを提供する負担が中間管理職に集中しないように、上級幹部と従業員の責任を増やすのだ。2つ目は、経営幹部とも従業員とも協力して、パフォーマンスの要求に対するプレッシャーを軽減させることだ。