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企業は、報酬の引き上げや内部昇進、柔軟な働き方の提供、リモートワークの円滑化といったさまざまな人材戦略を通じて、従業員の定着率向上に取り組んでいるが、離職の増加に歯止めがかからない。筆者が提唱するのが、職場における能力開発プログラムを通じて、人材を組織に惹きつけ、維持する方法だ。本稿では、従業員にとって学習や能力開発の機会がいかに重要であるかを論じたうえで、定着率を高めるための3つの方法を紹介する。


 米国では、依然として記録的なペースで離職者が相次ぎ、企業には候補者の数を上回る空席が生じている。多くのリーダーが、有能な人材を惹きつけ、維持することを、2022年の最重要課題に据えているのは無理もない。

 報酬の引き上げや内部昇進、勤務スケジュールの柔軟性、そしてリモートワークの円滑化は、どのような時代でも優れた人材戦略であるのは間違いない。しかし、リーダーにとって非常に利用しやすく、必ずしも多額の費用をかけることなく、従業員が真に求めているものを与えられる方法がある。

 筆者は、職場における能力開発が、企業が現在直面している多くの問題を解決する、ほぼ完璧な方法であることを発見した。なぜだろうか。

 第1に、従業員がそれを求めている。リンクトインの年次報告書「2022グローバル・タレント・トレンド」によると、能力開発は企業文化を改善する最善の方法だと、従業員は考えている。

 従業員の能力開発を怠った場合のコストは大きい。人材紹介会社エグゼキュ・サーチグループの報告書によれば、プロフェッショナルの86%が、能力開発の機会をより多く提供してくれる会社があれば転職すると回答している。

 第2に、能力開発は会社にとっても有益だ。ソフトウェアソリューションに関する情報提供を行うベター・バイズが実施した最近の調査では、能力開発の機会を与えられた従業員は、そのような機会が与えられなかった従業員と比べてエンゲージメントが15%高く、定着率も34%高いことが明らかになっている。さらに、デロイトの調査では、以下の結果が示されている。

「強力な学習する文化を持つ組織は、そうでない組織に比べて、新しいプロダクトやプロセスを開発する確率が92%高く、生産性は52%高く、プロダクトとサービスをいち早く市場に投入する確率は56%高く、利益率は17%高い。従業員のエンゲージメントや定着率も30~50%高い」

 学習と能力開発に重点を置くことが、業績に極めて重要な影響をもたらすのは明らかだ。加えて、そのコストは必ずしも高くない。ただし、能力開発はパーソナルな経験になるよう行う必要がある。つまり、従業員にとって現実感があり、実際に本人と深く関係があるものにしなければいけない。

 そこで、組織が学習と能力開発に重点を置くための3つの方法を以下に紹介しよう。