昨冬、「DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー」(DHBR)の法人向けプランをスタートしました。おかげさまで順調に伸びていますが、初めてお使いになる方から、DHBRを「どのように使ってよいかわからない」という声が寄せられています。そこで、今回はDHBRのデジタルサービスの効果的な使い方とおすすめのコンテンツについてご紹介いたします。

チームの成長につなげる
DHBRの法人向けプラン

 昨冬、DHBRの法人向けプランをスタートしました。このプランは、DHBRのすべてのデジタルコンテンツにアクセスが可能となるもので、1チーム5アカウントから申し込みができます。利用者の入れ替えが自由に行えることや請求払いに対応しているのが特長です。

 実際、次の課題を抱えている法人の皆様に申し込みをいただいております。

・グローバルなビジネストレンドをつかみたい
・組織やチームを動かす説得材料を探したい
・戦略的な思考力の高い人材の育成に役立てたい

 一定数以上の契約をいただいた法人とは、編集長を含めたDHBR編集部メンバーがその勉強会や社内浸透のための手伝いをするなどしており、おかげさまで数多くの企業に導入が進んでいます。

 しかしながら、初めてDHBRに触れる方も増えており、「どう使ってよいのかわからない」という声が寄せられています。

 そこで今回は、DHBRのデジタルサービスを使い始めた方々に対して、効果的な記事の選び方や読み方、そしてその使い方についてお伝えいたします。

まずは毎号の特集で
世界のトレンドをつかむ

 まず、何といってもご覧いただきたいのは、雑誌の特集号に掲載した最新の論文です。

 DHBRでは毎号、旬な特集をお届けしています。米HBRの特集や論文を基にしながら、DHBRで独自に企画を立てて特集化しています。欧米企業と日本企業の課題感が必ずしも一致するわけではないため、日本の読者が読みやすいように日本版のオリジナルコンテンツを加えて編集しています。

 例えば、2022年5月号の「リーダーシップの転換点」では、ロンドン・ビジネススクール教授のリンダ・グラッドン氏らの論文に加えて、資生堂の魚谷雅彦社長のインタビューを掲載しました。

 日本人経営者や識者へのインタビュー記事は、日本版オリジナルコンテンツの一つです。特集の趣旨をいち早く理解したいということで、インタビュー記事から読む読者も数多くいます。

 オンラインでは、サイト上部の「バックナンバー」から最新号の「目次・詳細」をクリックしていただけると、特集号の目次と論文の一覧が確認できます。そこからテキスト形式の記事として閲覧ができたり、雑誌で掲載したレイアウトのPDFをダウンロードできたりします。

 あまり長い論文を読む時間がないという場合は「Idea Watch」というシリーズもおすすめです。最新の研究を基にした短い記事ながら、あっと驚く意外な内容が掲載されています。研究者の中にはこのコーナーで「ネタ探しをしている」という方もいるほどです。

 DHBRは原則、毎月10日発売の雑誌です。現在、雑誌掲載の論文については、発売日前日の夕方に配信しています。もし忘れてしまっても大丈夫です。発売日にはメールマガジンでお知らせをしています。

 このように月1回でも構いませんので、特集内の気になる論文をぜひご覧いただけると幸いです。

会員限定コンテンツが利用可能
『世界標準の経営理論』の解説も

 次にご覧いただきたいのは、HBRのオンライン版であるHBR.orgに掲載された翻訳記事や動画などのオンライン向けコンテンツです。

 翻訳記事は、HBRのオンライン版に掲載された記事の中から厳選し翻訳しています。日本版のオリジナルとして行っている連載記事などを含めて、現在は平日に1日1本から2本のペースで記事を配信しています。

 オンライン向けコンテンツは、雑誌掲載の論文よりは軽めの内容が多く、最新のトレンドを把握しやすいのが特徴です。トップページやサイト上段の「記事を読む」からご確認いただけます。

 よく「『記事を読む』『論文を読む』の違いは何か」というお問い合わせをいただきます。主に、オンライン向けの記事は「記事を読む」から読むことができ、雑誌掲載の論文は「論文を読む」から閲覧できます。

 記事の見分け方についていえば、たとえば、記事上段に「2022.04.22」と日付が入っていたらオンライン向けの翻訳記事、「2022年5月号」と記載されていたら雑誌掲載の記事とお考えいただくとよりわかりやすいと思います。

 最近は、動画も数多く配信しています。たとえば、マイクロソフトCEOのサティア・ナデラ氏へのインタビューの字幕付き動画や、DHBRのイベントで配信したグラットン氏へのインタビュー動画も閲覧できます。

 その多くは会員限定のコンテンツです。早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授による『世界標準の経営理論』の解説動画もその一つです。

 こちらは、11万部を突破した同タイトルの書籍に記載した各章の経営理論を入山教授自らが語る内容で、これだけでも価値を感じてもらえるはずです。

 もしすぐに読めなくても、記事の右下(PC)ないし左下(モバイル)に表示されたフォルダアイコンにある「後で読む」を選択してみてください。お気に入りの記事を保管することができます。

時代を超える名著を掲載
まずはこの20論文から

 さて、DHBRのコンテンツに慣れた頃に、ぜひ活用いただきたいのがアーカイブ(論文セレクション)です。

 DHBRの法人会員であれば現在、合計3000本以上の過去のコンテンツを閲覧できます。その魅力は、時代を超えていまも価値のある論文に、いつでもアクセスできることです。

 とはいっても、「どのような論文から読み始めたらよいのかわからない」という方も数多くいます。そこでいくつかの切り口をご紹介いたします。

 まず、定番の戦略論に関わる名著シリーズです。

 ファイブフォース分析を広め、競争戦略の大家であるマイケル・ポーターはHBRの常連の寄稿者です。ポーターの「競争の戦略」「戦略の本質」はいまもなお多くの方に読み継がれています。

 さらに、もう一人挙げるとすればクレイトン・クリステンセンです。代表的な論文に、シェアトップの企業が顧客の要望に応え続けることでイノベーションが遅れ、市場シェアを奪われてしまう原理を示した、「イノベーションのジレンマ」があります。また、「Jobs to Be Done:顧客のニーズを見極めよ」も大きな影響を与えています。

 ほかにも、1980年代の日本企業の強さを組織の内部要因に見出したC. K. プラハラッドとゲイリー・ハメルによる「ストラテジック・インテント」「コア・コンピタンス経営」も代表的な論文です。

 競争の激化した市場を「レッド・オーシャン」と名付けてそこから脱する戦略を提唱したW. チャン・キムらの 「ブルー・オーシャン戦略」も、HBRにとって欠かせない論文です。

 日本人でHBR誌上に寄稿した一人に、一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏がいます。暗黙知と形式知から知識創造の原理を解いた名著「ナレッジ・クリエイティング・カンパニー」もご覧いただけます。ハーバード・ビジネス・スクールにおいて唯一の日本人教授である竹内弘高氏との共著である「賢慮のリーダー」も必読です。

 もし、部下を持ったばかりであれば、リーダーシップ論の大家であるジョン・コッターの「リーダーシップとマネジメントの違い」はぜひご覧いただきたい内容です。

 また、ウィリアム・オンケン Jr.らによる「マネジャーが時間管理の主導権を取り戻す法」は、上司が引き受けてしまいがちな仕事をサルに例え、ユーモアたっぷりにマネジャーの仕事の本質を描いています。

 一方、マーケティング担当者であれば、いち早く押さえておきたい論文もHBRで発表されています。たとえば、IDEO創業者のティム・ブラウンによる2008年の「IDEO:デザイン・シンキング」は、デザイン思考ブームの火付け役となりました。

 また、2013年に出たトーマス・ダベンポートらの「データ・サイエンティストほど素敵な仕事はない」は、データ・サイエンティストという職業を世に知らしめた論文です。

 人事関連の論文も豊富です。いま、注目を集めている職場の心理的安全性について、いち早く説いたのがエイミー・エドモンドソンで、彼女の 「『恐怖』は学習意欲を阻害する」にはいまも多くのヒントが詰まっています。

 近年では、マーカス・バッキンガムらの「チームの力が従業員エンゲージメントを高める」がおすすめです。組織図に現れないチームの力の重要性を説き、従業員エンゲージメント向上のヒントを提供してくれます。

 いま、企業の社会的な存在意義(パーパス)をめぐる議論も盛んです。クリストファー・バートレットらは1994年に 「戦略を超えて──パーパスの時代」で、パーパスの重要性を述べていました。

 また、ポーターは、社会問題の解決に取り組むことで社会的価値を創造し、その結果として経済的価値が創造されるということを「共通価値の戦略」として提唱し、CSV(Creating Shared Value)という言葉を浸透させました。

 当時、一世を風靡したジェームズ C. コリンズらの「ビジョナリー・カンパニーへの道」も改めて読み返したい論文です。

 そのほか、自らを律することに役に立つ論文もあります。

 人生の戦略論を説いたクリステンセンの「プロフェッショナル人生論」や、自己の強みに焦点をあてるべきだというピーター・ドラッカーの「自己探求の時代」は何度読んでも、数多くの示唆を与えてくれることでしょう。

不確実な時代において
確かな「思考の軸」を身につける

 ここまで紹介した論文は、アーカイブ内に収録してあるほんの一部にすぎません。DHBRでは、識者に「おすすめの論文を紹介してください」と尋ねるコーナーや、HBRの注目の著者について記事化した連載記事もあります。ぜひアクセスしてみてください。

 ご覧いただくとお分かりのとおり、こうした論文は必ずしもビジネスで起きている数々の課題の解決策を直に記載しているわけではありません。ともすれば抽象的に感じるかもしれません。

 ですが、そこで紹介されたフレームワークや理論をあてはめて、現場の課題を捉え直していただきたいのです。こうした考え方の枠組みを、私たちは「思考の軸」と呼んでいます。

 不確実性の高い時代、個別の解決法やノウハウをいくら知っていても、瞬く間に陳腐化してしまいます。思考の軸があるからこそ、現場で起きている個別の課題や個々の悩みをある枠組みをあてはめて考えることができますし、この思考の軸を磨くことで、あらゆる現象に対応できるようになり、ビジネスリーダーとして大きな成果を上げられると信じています。

 DHBRでは、

世の中を変えるリーダーに
アイデアと思考の軸を提供し
よりよい未来をつくる

 というパーパスを掲げています。会社や社会を変えようと日々奮闘されているリーダーの皆様に貢献できるよう、ウェブサイトのリニューアルやイベントの開催を含めて、より使い勝手のよいサービスを実現してまいります。

 引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

(編集長 小島健志)