思うように進まない日本のクラウド化

――クラウド活用はさまざまな可能性を包含していますが、現段階で日本はどこまで進んでおり、どのような課題を抱えているとお考えですか。

守屋 アジア太平洋地域8カ国を対象にした当社の調査結果を紹介しましょう。クラウド移行の準備状況を示す「クラウドレディネス・スコア」が、日本は、アジア太平洋地域8カ国の中でなんと最下位です(図2)。
 

図2 アジア太平洋地域における国別クラウドレディネス・スコア

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クラウド移行の準備ができているかを、同一の基準で調査して点数化したのが「クラウドレディネス・スコア」。アジア太平洋地域8カ国で高いのは中国とインドであり、日本は最下位である。

守屋 日本でクラウドの導入が十分に進まないのはクラウドの持つ可能性が正しく理解されていないことにあると考えています。今後促進していくためにはクラウドの持つ可能性を正しく理解し、そのパワーを最大限に活用するアーキテクチャー戦略が重要です。クラウドの最大のパワーは、アンバンドル化によって、ハードウエアとソフトウエア、あるいは、データとアプリケーションを切り離せるところにあります。サービスの分割が可能となり、サービス同士の相互接続も容易になります。クラウドを活用すれば、企業間連携を行いながら、仕事のやり方を変えることも可能になります。イノベーションの起爆剤となる、それがクラウド本来のパワーなのです。

 また、クラウド活用を促進するために、国も積極的な支援をしています。たとえば、DX認定制度はインパクトのある取り組みの一つであり、デロイトも取得サポートをしています(デロイト トーマツ、DX投資促進税制の適用を支援する専門家チームを立ち上げ|Deloitte Japan)。この認定制度へ取り組むことで、税制優遇だけではなくDX戦略を体系的に整理することができ、DXを企業活動全体に昇華していけるメリットが得られます。

デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員
守屋 孝文
ソフトウエア業界での勤務を経て、2007年にデロイト トーマツ コンサルティングに入社。企業のテクノロジー戦略立案からM&Aに伴うシステムインテグレーションやITガバナンスの構築など幅広い経験を有している。近年では企業のクラウドトランスフォーメーションに関する戦略策定から実行まで、多くの案件を手掛けている。

――SOMPOグループは、早い段階からクラウド移行に取り組んでこられました。その経緯と効果について簡単にご紹介ください。

浦川 2つのポイントに絞ってご紹介します。第1は、クラウドファーストによる展開です。

 当社はクラウドサービス型営業支援システム「Salesforce」を10年以上利用し、クラウドの良さを実感していました。2016年にデジタル戦略部門を立ち上げ、デジタル化を推進してきました。その大半はクラウドベースで実装しており、現在では、損保商品の開発・提供を新たにオンプレミスで実装することはほぼなくなりました。

 第2のポイントは、基幹システムのクラウドレディ化です。損保会社の基幹業務とは、契約者・代理店からの申し込みを引き受け、保険金を支払い、さまざまな保険商品の契約を管理していくことです。これを支えるシステムは1980年代にメインフレームで開発したオンラインシステムで、数十年にわたって改修を重ねた結果、全貌を把握できないほど肥大化しており、クラウド移行は極めて困難でした。しかしこのままでは、Society 5.0の社会に対応できません。そこで2016年から、デロイトの支援を受けながら、基幹システムを完全にJavaに置き換えるプロジェクトを進めています。基幹システムの完全Java化は2026年に完了予定で、並行して一部機能のクラウド移行も進めています。基幹システムの刷新には投資がかさみますが、その先には青い空が見えている、という段階です。