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バイトダンスは、創業からわずか10年で世界最大のスタートアップに成長した。ティックトック(TikTok)の運営会社として有名だが、同社はそれ以外にも次々とヒット商品を生み出している。何がバイトダンスの急成長を牽引してきたのか。筆者らは同社のイノベーション戦略に焦点を当て、シェアードサービス・プラットフォーム(SSP)を基盤とする仕組みづくりが、その重要な要因だと指摘する。本稿では、SSPの5つの特徴と、他社が同様の取り組みを行う際の3つのポイントを示す。


 創業わずか10年で、バイトダンス(北京字節跳動科技)は世界で最も企業価値の高いスタートアップに成長し、数々の記録を塗り替えてきた。2021年には、150カ国で19億人の月間アクティブユーザーと11万人以上の従業員を抱え、580億ドルという驚異的な売上高を記録した。

 大半のユーザーは同社について、大ヒットした短編動画投稿アプリのティックトック(TikTok)しか知らないだろう。このアプリの世界でのダウンロード数は30億回以上に上る。メタ・プラットフォームズと同社傘下のアプリを除けば、他の追随を許さない。

 しかし実は、バイトダンスは猛烈な勢いで、次々にヒット商品を生み出している。最初のヒットはトウティァオ(Toutiao)だ。中国で最も人気の高いニュースアプリで、現在3億2000万人の月間アクティブユーザーを擁する。また、ティックトックの先駆けとなった短編動画アプリのドウイン(Douyin)もある。両者の広告収入はそれぞれ、同社の総広告収入の20%と60%を占める。

 なぜ、バイトダンスはこれほどの成功を維持できるのだろうか。筆者らは、SSP(シェアードサービス・プラットフォーム)を活用したイノベーション戦略が重要な要因だと考えている。

専門に特化するチーム

 バイトダンスによるSSPの活用法は、大半の企業とは異なる。同社では、製品チームやユニットがオペレーションリソースを自前で管理することはなく、その代わりに多くの共通の事業やテクノロジー、オペレーション機能(HRや法務もこれに当たる)が集中管理され、各チームに編成される。

 これらのチームは極めて専門性が高いため、新規事業のニーズに合わせて適切な人材を探し、柔軟に配置できる。この一見複雑な組織体制は、クラウドおよび共有のオペレーションツール(一部は社内で開発している)によって維持されている。

 製品チームとその関連チームが、顧客ニーズの対応に注力する点は従来と変わらない。ただし、開発と成長を加速させるために、複数の異なるSSPチームの力を借りる。

 たとえば、新規事業チームがユーザーニーズと市場機会の調査を行う場合、SSPのユーザー調査の専門家にデータサポートを依頼することで、市場分析に要する時間を短縮できる。他社では、製品チーム自身がこのような作業を担当するが、彼らがこの手の情報収集に精通しているケースは稀だ。

 その後、アプリや機能の新規開発を正当化するユースケースが特定されると、製品チームはSSPレベルのエンジニアとペアを組み、新製品や新機能の開発に当たる。

 SSPによって開発された既存の技術を、製品チームがカスタマイズするケースもある。その一例がアルゴリズムだ。バイトダンスの製品チームは、SSPのアルゴリズムエンジニアと連携して、極めて強力なレコメンデーションエンジンを微調整していく。

 また、SSPは他の重要なチームも結集させる。望ましいユーザーの特定・獲得に取り組むユーザーグロースチーム、新たなコンテンツ獲得に向けたパートナーシップを確立するコンテンツチーム、より深いユーザーインサイトを捉えるアナリティクスチーム、そしてマネタイズを推進するセールスチームである。

 このように多くのケイパビリティが大規模なSSPに集約されるため、特に事業の可能性を探る段階では、実際の製品チームは小規模で特化した業務を担う傾向が強い。たとえば、ドウインはほんの一握りの社員で始まったし、教育事業チームはわずか2人でスタートした。

 重要なのは、SSPと、市場と向き合うチームが共生的で、相互に利益をもたらす関係を築いている点だ。バイトダンスの成功を可能にしたのは、この発見と改善の繰り返しという好循環なのだ。