bashta/Getty Images

パンデミックは女性のキャリアに悪影響をもたらし、女性リーダーの退職が増加している。男女平等の実現に支障をきたすことはもちろんだが、問題はそれだけに留まらない。女性リーダーが率いるチームは、部下のエンゲージメントが高まり、生産性も上がりやすい。彼女たちが会社を去り、男性リーダー中心の組織になることで、従業員にも悪影響が生じるのだ。本稿では、この問題を詳細に分析したうえで、3つの有効な解決策を提示する。


 パンデミックが働く女性に負の影響をもたらし、そこから回復するには相当な時間を要するだろう。パンデミックが発生した最初の年だけでも、世界で5400万人の女性が離職し、そのうちのほぼ90%が労働市場から完全に退出した。現在、世界で女性の労働参加率は47%に満たず、男性の72%を大きく下回る。

 この損失は、男女平等、キャリアアップ、指導的地位への女性登用に、計り知れない影響を与える。しかし、女性にもたらす影響だけを見ていては、問題の規模を過小評価することになる。

 従業員が女性の下で働けなくなると、エンゲージメントと生産性が低下する。なぜなら女性リーダーは、よりエンゲージメントの高いチームをつくり、より高業績を生み出し、組織の大幅なコスト削減に貢献するからだ。

 多くの従業員が別の職場でのチャンスを求めて退職し、企業の人材不足が過去15年間で最も深刻ないま、より多くの女性リーダーを維持して昇進させることは、労働力を確保するために最善かつ最も急いで実行すべき解決策だ。

女性は困難の対処に優れている

 ポテンシャル・プロジェクトは、100カ国近くの約5000社のリーダーと従業員を対象に、複数年にわたる調査を実施した。筆者らが理解したかったのは、リーダーがどのようにして、トップとして厳しい仕事をこなしながら、人としての良識を保つという困難に対処しているのか、ということだった。

 筆者らは、分析から2つの特性を導き出した。1つは「賢明さ」で、これは難しい状況でもやるべきことを成し遂げる精神だ。もう1つは「思いやり」で、他者への配慮と共感、そして支援や援助の意思だ。

 どちらの特性も重要だが、2つが組み合わさることで、重要指標に飛躍的に高いインパクトがもたらされる。たとえば、賢明で思いやりのあるリーダーの下で働く従業員は、そうでない従業員よりも職務満足度が86%も高い(自身のリーダーとしての賢明さと思いやりを測定するには、この簡易なアセスメントを受けるとよい)。

 データを男女別に見ると、その差は衝撃的とまではいかないまでも、かなり顕著に表れている。筆者らの調査では、女性の55%が部下から「賢明で思いやりがある」と評価されたのに対し、男性はわずか27%だった。反対に、男性の56%は「賢明さと思いやりに欠ける」と評価され、筆者らの定義で「無能で無関心」に分類された。また、人間味のある方法で困難に対処できると部下が回答したのは、女性リーダーと男性リーダーで2:1の割合になった。

 調査を始める前、筆者らは「人間味のある方法で困難に対処する」ことが、リーダーにとって本質的に不可欠な点だとは考えていなかった。

 世界的なパンデミックが仕事のあり方を変え、私たちの生活を根底から覆した時、リーダーたちは頼れる戦略もない状態で非常に困難な決断を下さなければならなかった。悲嘆、不安、不確実性の波の中でチームの舵を取り、彼らのメンタルヘルスを守り、その過程でみずからの弱さを見せることが求められた。

 仕事を継続し、賢明で思いやりを持つ女性が、パンデミック下のヒーローになったことは驚きではない。最近のマッキンゼー・アンド・カンパニーの報告書は、女性がこの異常事態において、同じレベルの男性に比べて、より強力なリーダーとして立ち上がり、それに伴う余分な仕事を引き受けていることを裏付けている。

 従業員6万5000人を対象とした同社の調査では、女性マネジャーはパンデミックを乗り切るために人間中心の行動を取っていると、従業員から高い評価を得ている。情緒的サポートの提供(12%高い)、包括的なウェルビーイングの確認(同7%)、燃え尽きに対処するための支援(同5%)などの項目において、女性マネジャーの評価はより高かった。