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大退職時代を迎え、転職を決断する人が急増している。退職者が出ることの影響は、チーム内で業務の調整が必要になるだけに留まらない。チームの誰か一人が退職すると、ほかのメンバーも辞めていくという負の連鎖が起きやすいのだ。残されたメンバーのモチベーションを維持するために、リーダーは何をすべきなのか。本稿では、6つの戦略を紹介する。


 強力なリーダーシップを発揮するには、チームメンバーの士気とエンゲージメントを維持することが欠かせない。チームの退職率が高い場合はとりわけ、あなたがメンバーを前向きな気持ちにさせ、高いモチベーションを維持する必要がある。

 研究によると、社会的伝染が起きることで、チームの誰か一人が退職すれば、ほかのメンバーにもその影響が波及しかねないという。一人が辞めることで、退職の連鎖が起きる可能性が高いのだ。

 では、チームの誰かが辞めた時、残されたメンバーのモチベーションを維持するために、どうすればよいのか。本稿では、そのための6つの戦略を紹介する。

 ●盤石な足場を築く

 社会心理学者のハイディ・グラントとアーンスト・アンド・ヤング(EY)のアメリカズエリアで最高学習責任者を務めるタル・ゴールドハマーが指摘するように、人間の脳は、私たちが仕事や人生で直面している膨大な不確実性に、対処するようにはつくられていない。事業環境、顧客や従業員の期待、仕事の進め方が絶えず変化し、新型コロナウイルス危機の出口も見えない中で、足元の地面が常に揺らいでいるように感じるのも無理はない。

 不確実性の中で、脳は脅威にさらされた状態になる。このような状態に陥ると、モチベーション、協調性、自己統制力、全般的なウェルビーイングが低下する恐れがある。同じチームのメンバーが辞めれば、脅威がますます増幅される。

 この脅威に対処するには、チームのメンバーが確実だと思えることを、できる限り増やせばよい。たとえば、あなた自身が会社を辞めようと思っていないのであれば、それをメンバーにはっきり伝えよう。「ちなみに、私に辞める予定はありません。この先も会社に残ります」と言えばよい。

 チームが会社の戦略的方向性を知りたいと考えていて、あなた自身もそこに疑問を抱いている場合は、「じきにわかる」などとお茶を濁すのではなく、プロセスを明確に示すことが望ましい。上層部に方針を尋ねるつもりであることをメンバーに示し、その回答をチームに報告する日程を伝えよう。

 これにより、メンバーは強固な足場の上に立ち、安心感を覚えることができる。

 ●個人とチームの処理能力を把握するためにフィードバックを求める

 頻繁にメンバーの状況を尋ねて、一人ひとりがどのような業務を抱えているかを理解しよう。それを通じて、メンバーの業務の割り振りをどう見直すべきかが見えてくる。また、その時点におけるチーム全体の業務処理能力も把握できる。

 チームの業務量が処理能力の限界に近づいている、あるいは限界をすでに超えているために妥協が必要な場合は、メンバーと一緒になって問題解決を行ない、優先順位を再設定すべきだ。

 チームとしていかなる目標を設定するか、あるいはどのような活動を行なうかに関して発言権を持つことで、人々のモチベーションは高まる。また、メンバーに意見を求めれば、自分では思いつかないアイデアが出てくるかもしれない。

 メンバーは絶えずフィードバックを求められることで、自分が実行している業務の中でほかの人に任せられるものや、完全にやめてもよい仕事が見えてくるので、自分の処理能力に余裕が生まれる可能性がある。そうすれば、より価値の高い業務に携わるための時間を捻出できるはずだ。

 さらに、メンバーからのフィードバックを通じて、リーダーは一人ひとりの業務負担を把握しやすくなる。その結果、現実的にどの程度の目標を課すべきかについて、修正を加えるケースもあるだろう。メンバーの業務負担を把握しておけば、チームの目標を達成するためにもっと多くのリソースを用意してほしいと上層部にかけ合う時、より納得感のある主張ができるかもしれない。