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個人や組織が不確実性の時代を乗り越えるためには、世の中の変化と同じスピードで学び続けることが不可欠である。その際、自分たちの過去の思考や経験に頼るのではなく、他業界の専門家から学ぶことが有効だと筆者は主張する。他業界では当たり前に採用されているアイデアを取り入れることで、自分たちの業界に変革をもたらす可能性がある


 混乱と不確実性の時代における重大な課題は、個人や組織が世の中の変化と同じスピードで学び続けることである。これまでに遭遇したことのない問題を分析し、これまでに考えたことのない機会を理解し、これまでに経験したことのない感情を処理しなければならない。

 そこでリーダーは、ともに仕事をする人々に、自分が働いたことのない分野の専門家から学ぶことを推奨すべきである。ある業界では日常的に行われていることだとしても、それを他の業界に取り入れたら革命をもたらすかもしれない。それが業界の常識を覆すようなものなら、なおさらだ。

 企業のイマジネーションを高めるには、専門分野の外からインスピレーションを得るのが一番だ。迅速に学習したければ「よそ者」に学ぼう。

 クリストファー E. ボーガンとマイケル J. イングリッシュは、優れた研究をもとに執筆したリーダーシップと組織学習に関する著書の中で、ある分野で一般的な考え方が別の分野に迅速な変革をもたらす事例について、ビジネス史の1ページ目から紹介している。

「1912年、好奇心旺盛なヘンリー・フォードはシカゴの食肉工場を訪ねて、肉を切る作業を見学した。モノレールに取りつけられたフックに枝肉が吊るされ、作業員は自分が担当するカットを終えると、肉を押して次のステーションに移動させた。
 視察が終わり、案内係がこう尋ねた。『みなさん、どうでしたか?』。フォードは彼のほうを向いて言った。『ありがとう、おかげでとてもよいアイデアが浮かんだようだ』。それから半年足らずのうちに、フォードのハイラン・パーク工場で世界初の組立ラインによるマグネトーの生産が始まった」

 いまの時代を象徴する事例もある。『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙は最近の記事で、逼迫するシカゴの病院に所属する牧師が、新型コロナウイルスの初期の危機とオミクロン変異体の猛威で精神的・感情的な葛藤に直面した看護師を支援する様子を紹介した。

 元陸軍の退役軍人でもある牧師は、「看護師の会話に出てくるフレーズが、戦闘地域で従軍した部隊の人たちから聞いたものに似ていると気づいた」。そこで、軍が戦争のトラウマに対処するために開発した概念や技術を、看護師がウイルスとの戦いで強い心を保てるように支援するためのプログラムに取り入れた。

 ある看護師は牧師と彼のプログラムについて、「私たちと退役軍人をうまく関連づけていました」と感嘆した。「そのような関連性について、私は考えたこともありませんでした。この部門で看護師を務めて20年になりますが、私たちのチームがそのようなトラウマを抱えていることを知らなかったのです。彼にその関連性を指摘されて、ああそうか、どうして気がつかなかったのだろうと思いました」。