デジタル時代にこそ求められる「5つのディシプリン」

 私は、先生の「5つのディシプリン」は、まさにデータやデジタルテクノロジーを人間中心の企業経営に活かすために必須の原理だと考えています。そして、「5つのディシプリン」そのものも、デジタルがもたらすインパクトによってさらに高度化、加速できると考えています(図表)。

 特に「システム思考」は、複雑な物事の因果関係を深くとらえるために欠かせません。そして、デジタルテクノロジーを活用すれば、より深い因果の把握が可能になり、システム思考も高度化できると思っています。

センゲ まさにその通りですね。私たちは表面的な相関関係に囚われず、複雑な問題の構造を見て、本当の原因を追究しようとしなければなりません。そのためには、ただ統計処理された数値の相互関係を見るだけでなく、シミュレーションなどのツールを使って理論を組み立て、それを検証することが求められます。相関関係だけを見ていると、システムの構造がいかにシステムの挙動に影響を与えるかを見誤る可能性があります。

 そして、デジタルによってデータがより広く行き渡るようになると、データの意味を理解できるかどうかが、企業にとって非常に重要な能力になります。個人においても組織においても、高度なセンスメイキングのスキルが求められ、企業はそのためにふさわしいカルチャーや仕組みを整えなくてはなりません。

 具体的には、データの理解や対話を促すリソースとして、キュレーターやデータライブラリアン、ファシリテーターを組織内に置いたり、自社の「思い込み」に率直に疑問を呈することができる信頼の文化、膨大な情報に謙虚になる文化を築いたり、不確実で混乱した環境でも長期的な方向性と目的を安定させられる共有ビジョンを浸透させたり、といったことです。これらが関係づくりの場「リレーショナルフィールド」の質を高め、より深い学習に必要な安心感と信頼できる対人関係を生み出すのです。