障壁1:評価されることへの恐怖心

 筆者らが行った第1段階の調査では、米国内の幅広い業種のフルタイム専門職900人を集め、執筆のタスクを依頼した。

 その際、指定した期限内に完了するのが困難なタスクを意図的に用意し、期限前のどの時点でも締め切り延長を要請できると参加者に伝えた。また、別の参加者がマネジャー役となって文書の品質を評価し、現金ボーナスを支給するかどうかを決める、という情報も伝えた。

 そのうえで、一方のグループには、締め切りの延長を求めた場合、その事実がマネジャーにも知らされる、もう一方のグループには、締め切りの延長を求めてもマネジャーには知らされない、という条件が伝えられた。

 評価が文書の出来栄えだけに基づいて行われるという点は、参加者全員に明確に伝わっていた。それでも、締め切りの延長申請をマネジャーに知られると言われたグループでは、参加者が実際に延長を求めた割合は31%少なかった。さらに予想通り、締め切りを延ばした参加者の文書は、当初指定された期間内に作業を終えた参加者のものよりも長文で、品質も高かった(評価は他の参加者が行った)。

 この結果から、従業員は上司から否定的な評価を受けるのを恐れて、締め切りの延長依頼を躊躇していること、そしてその結果、上司に喜ばれる形でパフォーマンスを改善できる機会を逸していることが伺える。

 これらの発見を検証するために行った第2段階の調査では、1000人以上の参加者が上司の立場になり、第1段階の研究で集めた文書の評価を行ってもらった。重要な点として、上司には各執筆者が追加の作業期間を要請したかどうかの情報を伝えられたうえで、文書の出来栄えだけに基づいて評価を行うという指示が与えられた。

 すると今回も概して、締め切り延長を求めた人の文書のほうが高品質だと評価された。しかも彼らは、締め切り延長を求めなかった人々よりも、ずっと有能でやる気があるという評価も受けた。