PPDはそもそも生理学的なものだが、サラの場合には、プロフェッショナルとしての基盤を見失ったことが悪化の原因となった。彼女は自分の気持ちを安定させようと、必死に仕事にしがみついていたが、それでも落ち込み続けた。

 やがて、生活のあらゆる側面で、本来機能すべき能力が低下していった。育児休暇から復帰して半年後、彼女は仕事を辞めた。それは1年前には考えられないことだった。

 その間、上司や同僚にはPPDのことをずっと隠していた。彼女が苦しんでいると知って、多くの人が驚いた。それを口にするのは自分の弱さを見せるようなものであり、サポートのない職場環境ではありえないことだった。

「私は自分のことを、しっかりとした精神的にも強い人間だと思っていました。しかし今回のことで、誰でもPPDを発症する可能性があることに気づかされました」。サラは、ここまで落ち込んでしまう前に、PPDについてもっと知っておけばよかったと振り返る。

 PPDに関する基本的な知識や、PPDの症状が出産直後の数週間によく見られることは、以前より知られるようになってきた。しかし、PPDが出産から1年経過した後にも(育児休暇が終わっている場合が大半だ)発症する可能性があること、そして職場復帰のストレスがPPDを悪化させるリスク要因になることは、ほとんど知られていない。

 サラのように重度のPPDに陥ることは稀かもしれないが、復帰前や復帰期間中に、そのリスクや現実を理解していなければ、自身のウェルビーイングやキャリアに危険が及ぶ可能性がある。

 本稿では、そのリスクを軽減し、自信を持って仕事に復帰するために実行できる、いくつかの小さなステップを紹介したい。