3つのCを整えて強化すれば、キャリアでのより大きな成功、さらには金銭的な成功にさえつながるはずだ。

 とはいえ、それでもなお、仕事にやりがいと情熱を見出すのには苦労するかもしれない。大きな成功を収めたように見えても、心からの満足を感じていない人が非常に多くいることに、筆者はたびたび気づかされる。

 そこで、前述した3つを取り巻くさらなる3つのCが、熟考(contemplation)、思いやり(compassion)、仲間(companions)である。

 ●熟考

 今日、私たちはあまりに慌ただしく過ごしている。このため、自分の人生、キャリア、人間関係、そして広く世界について熟考する時間を持つことが、ますます重要となっている。

 だが、それはイグナチオの時代にも重要であった。1522年3月25日、彼は聖地エルサレムへの巡礼の途中、バルセロナ近郊の都市マンレサに数日だけ滞在するつもりで到着した。ところが、結局は丸11カ月間留まり、自己変革の時を過ごすことになる。修道院の宿泊所で働くかたわら、1日の数時間は独りで祈りを捧げて瞑想し、心の内に倫理観を見出し追求するための最善の方法は何かを熟考した。

 その中には、当時としては革命的な概念もあった。たとえば、1日の中で特定の時間を決めて祈りと瞑想を行うのではなく(主要な修道会のほとんどは現在もそうしているが)、マインドフルネスをすべての行動において、どこにいようと実践するという慣行だ。

 私たちも同様に、自身を取り巻く慌ただしく騒々しい環境の中で、立ち止まって心の深部にある声を聞く必要がある。ただし、どの慣行が効果的かは人によって異なる。

 筆者を例に挙げれば、朝一番にスマートフォンを見ないよう努めている。簡単ではないが、ストレスを減らして集中力を高めるには非常に効果的だ。

 1日に数度、数分間の呼吸瞑想をするよう促す通知をスマートウォッチに設定しており、集中力を取り戻すのに役立っている。敬虔なカトリック信者である筆者は、新たなひらめきを得るために、福音書の言葉を思い浮かべながら瞑想する。最後に、活力と前向きさを保つために、1日に最低1回は早足のウォーキングをしている。

 宗教的か否かにかかわらず、どんな種類の熟考でもあなたの気分、エネルギー、パフォーマンス、ひいては免疫系にプラスの効果をもたらしうる。

 ●思いやり

 計5万人が働く3500の事業部署を分析した近年の研究で、思いやりのある振る舞いは、生産性、効率性、より低い離職率につながる予測因子であることが実証された。

 前述したように、軍人であったイグナチオは、マンレサに行く途中でイスラム教徒の男との議論が白熱し、殺害しようとまで考えた。しかし、ほどなくして、気づけば修道院の宿泊所で働いており、愛情を込めて病人の世話をし、思いやりの心を育んでいた。他者への深い思いやりは、個人の卓越性を示す真の証の一つである。

 ただし、自分自身を思いやるという律し方を理解し、実践することも同じように重要だ。イグナチオは最初、これが非常に苦手だった。告解の前には自分が犯した小さな過ちに異常なほど固執し、鎖でみずからを身体的に、限界まで罰することもいとわなかった。しかしやがて、自他ともに過ちを厳密に探すのではなく、よい部分を探すべきであることを悟っていった。

 あなたも、ひとたび自分を肯定的に受け止めて大事にすれば、周囲の人を助けやすくなるはずだ。

 筆者はイグナチオの人生に学ぶ学徒だが、最終的に自分への思いやりを受け入れるまでには50年以上かかり、優れたセラピストの助けも必要とした。自分を正しく愛せないという人は、優れた専門家に助けを求めることを躊躇すべきではない。セラピストやコーチ、あるいはイグナチオのように聴罪司祭でもよい。

 ●仲間

 ここでの仲間とは、人生の旅路における緊密なパートナー(私生活、仕事、恋愛、プラトニックの関係を含む)として、自分が選んだ少数の特別な人たちを指す。

 人はけっして一人で生きるわけではない。筆者が知る最も優れたリーダーたちは、最高の人材を周囲に置くことに徹底的にこだわり、彼らを支援することで日々のさらなる向上を促す。また、自分を正直にさせ、必要な時に背中を押してくれる存在として、秘密を打ち明けられる親しい友人関係を大事にしている。

 イグナチオは、有能で支援的な仲間たちを周りに集めることに秀でていた。長年にわたり優秀な人材を求め続け、その一人には後年インド、中国と日本に派遣してキリスト教を布教させたフランシスコ・ザビエルがいる。意図的に有望な人材を探し求めたうえで、彼らを育てることに膨大な投資をした。

 もう一人の例として、ホアン・デ・ポランコがいる。イグナチオは彼に文学と哲学を学ばせるために、13歳でパリに派遣した。9年後、比類のない教育を受けたポランコはローマに行き、ローマ教皇の秘書となり、そのわずか2年後、24歳で教皇庁の公証人に任命される。

 この時期、イグナチオは丸1年かけて個人的に彼を指導・訓練した後、最高水準の教育とジョブローテーションによる訓練をたっぷり受けさせた。パドバ大学での神学の勉強や、トスカーナでの学校の立ち上げなどだ。5年後、ポランコはイエズス会の書記官となり、重要メンバーとして25年を過ごし、イエズス会の初代から3代目までの世界総長に仕えた。

 総長とはどうあるべきかについて、イグナチオはイエズス会の会則で概説している。ここに含まれる4つの重要な特性を、筆者は人材のマネジメントと養成の仕事向けにアレンジして取り入れてきた。その内容は論文にまとめている。

 総長に求められる特性として、彼は「理論的事象と現実的事象の両方に対し、優れた知性と判断力を発揮する――つまり判断と決断の達人であること」と述べている。筆者はこれを、潜在能力の高さを示す特徴として「好奇心」および「洞察力」と解釈している。

 また、強い「エンゲージメント」も求め、「厳しさと愛情や思いやりを両立させながら、内面的にも外面的にも積極的に関与すること」としている。そして、揺るがない「意志力」も挙げ、「矛盾に直面しても心を失わず、常に目的を貫く。これを最大の権力者に対しても同様に実践し、必要であれば自分の命も犠牲にすること」と記している。

 私たちは20年も費やして正規教育を受けるが、刺激と助言によって自分を本当に変えてくれる賢明な相手を、慎重に決意を持って探そうとする人はほとんどいない。こちらの論考で概説しているように、そうした人脈の形成には8つの具体的な慣行が役に立つ。

 たとえば、そのような相手をみずから積極的に探し求める、彼らに心からの支援を与える、そしてイグナチオのように、自分はどうすべきかを恐れずに尋ねるなどだ。

 イグナチオが友人や家族、同志に送った手紙の多くは、「Quid Agendum」または同類の言葉で締めくくられている。これは彼の生涯にわたる切実な問い、すなわち「私はどうすべきだろうか」を意味する。

 たしかにイグナチオは、この問いを自分に投げかけ、他者には助言を与えた。だが同時に、最も信頼できる友人と同志に助言を求めることもしたのだ。