Mark Weiss/Getty Images

企業のパーパスに関しては、多くの議論が交わされている。しかし、それが従業員一人ひとりの動機に結びつかない限り、魂は宿らず、組織の成功はおぼつかないのが現実だ。従業員に個人のパーパスと企業のパーパスの結びつきを理解してもらうことは、最高経営幹部から現場マネジャーまで、あらゆるリーダーにとって最も重要な役割だと筆者は主張する。一人ひとりが仕事の意味や意義を理解することで、それぞれの仕事に対する向き合い方が変わり、それによって従業員と企業の両方が成長していくからである。本稿では、そのためにリーダーが果たすべき役割を3つのステップに沿って論じる。


 筆者はティーンエージャーの時、夏休みに食料品店でアルバイトをしたことがある。一日中、野菜の缶詰を箱から出しては一つひとつに値札を貼り、棚に並べる。延々とその繰り返しだ。まるで時が止まったかのようだった。顧客との接点はなく、店長の顔を見ることもめったになかった。

 ところが、筆者に幸運が訪れた。店の裏でフォークリフトにぶつけられ、尾骨に打撲を負ったことで、夏の終わりまで有給の病気休暇をもらえることになったのだ。アルバイトをした唯一の理由は、新しい自転車を買うお金を稼ぐことだったので、筆者は大満足だった。

 だが、お気づきの通り、この話はどこかおかしい。仕事とは、何か別のことをする余裕をつくるために、ひたすら耐えるべきものなのか。たとえば、新しい自転車に乗りたいから働くのか。それとも、それ以上の何かが仕事にはあるのか。私たちは、なぜ働くのだろうか。

 この問いかけが、ビジネスリーダーにとって根本的な意味を持つと筆者は信じている。そして、その理由を近著The Heart of Business(未訳)で説明している。この問いに対する一人ひとりの答えが、私たちが個人としてどのように仕事と向き合い、関わっていきたいかに影響を与え、その結果として自分自身と企業の成長を左右するのである。

 あの夏の食料品店でのアルバイトから歳月を経て、ベスト・バイのCEOになった筆者は、仕事に備わる本来の人間的価値を認識することで、従業員の幸福度や健全性が高まり、企業が地に足のついた成功を収めるのを目の当たりにしてきた。順調な時も試練の時も、それは変わらない。

 私たちはいま、健康、社会、経済、環境にまつわる複合的な危機に直面している。そのため、なぜ働くのかという問いに対して、ポジティブかつ確固たる答えを持つことが、これまで以上に重要になっているのだ。

 しかしながら、私たちの文化には、この問いに対するシニカルな答えが深く根を下ろしている。労働とは毎日決められた作業、苦悩をもたらす源、あるいは懲罰であるという概念は、古代ギリシャにさかのぼり、産業革命の時代にも続き、現在もなお、仕事に対する社会の考え方や感じ方に影響を及ぼしている。

 この見解によれば、仕事とはせいぜい目的のための手段にすぎない。日々の生活費のため(あるいは新しい自転車を買うため)、休暇中の旅行のため、老後の生活のために、仕事をしてお金を稼ぐのだ。

 従業員の10人中8人以上は自分が仕事に打ち込めていないと感じている。Cレベルやバイスプレジデント(VP)レベルの経営幹部ですら、仕事に打ち込んでいると感じているのは4分の1に満たないという調査結果も、何ら不思議ではない

 かつては、多くの仕事が厳しい肉体労働や単調で退屈な作業だったのが、いまでは身体的負担が少なく、頭を働かせて創造性を発揮する作業へと変化してきた。それでも、こうした後ろ向きの労働観がいまだにはびこっている。