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期待通りに物事が進まない時、あなたは現実を受け入れているだろうか。スティーブ・ジョブズのように、現実に抗おうとする強い意志を持つことも重要だ。しかし、自分たちの取り組み自体に問題があるという現実から目を背けるために、時間やお金やエネルギーを投じているとしたら、それによって失われるものはあまりに大きい。リーダーには「アクセプタンス」(受容)が不可欠である。本稿では、リーダーが重視すべき3つのアクセプタンスを紹介する。


 現実を受け入れる能力は、リーダーにとって最も有用かつ、最も誤解されているスキルの一つだ。これは、何世紀にもわたり哲学で、最近では心理学で用いられてきた概念で、適切に活用することで変化をうながせる。

 カール・グスタフ・ユングは、このように述べている。「受け入れることなしに、何も変えることはできない。非難は解放するどころか、精神を抑圧するだけである」

 しかし、今日のリーダーは、よりよい結果を得るための貴重なツールとして「アクセプタンス」(受容)を十分に活用していないようだ。

 アクセプタンスは、それほど価値のあるスキルではないと思えるかもしれない。その大きな理由は、現実に抵抗する強い意志を持つリーダーの話をよく耳にするからだ。アップルを率いたスティーブ・ジョブズは、社員に不可能を可能にさせたことが伝説となっている。ジョブズは社員のスケール感を歪め、達成不可能なことを可能であると信じさせた。「現実歪曲フィールド」と社内で呼ばれたものだ。

 こうした意志の強さには称賛すべき価値があるが、現実を受け入れることとのバランスを取れないリーダーの間で、誇張されることが少なくない。現代で最も著名なもう一人のビジネスリーダーである、ジャック・ウェルチはこう言った。「現実をありのままに直視しなければならない。過去のようにでも、望むようにでもなく」

 筆者が見てきた不適切なリーダーの行動のほとんどは、起きていることや状況を受け入れ、その範囲内で仕事をこなせないことが原因だ。不必要に厳しい行動や激怒、攻撃性、回避、人を締め出すことは、リーダーがその場の現実をうまく処理できていないことに起因する場合が多い。

 数年前、上場企業のCEOがある事業部長に向かって「こんな予測は認めない!」と、怒りの混じった汚い言葉で叫ぶのを目撃した。その後、最終的にCEOが次の四半期の収益予測にゴーサインを出すまで、CEOと事業部長は予測をより「受け入れられる」ものに上方修正していった。紙の上ではよい数字に見えても、それは実際の顧客との進捗状況や、ビジネスの現実に基づいたものではなかった。

 そして四半期の終わりを迎えると、CEOは実際の収益が修正された(自分にとって)受け入れられる予測と一致しなかったため、激怒した。皮肉なことに、業績は当初の予測通りだった。すると、CEOは突然レイオフを開始し、顧客に対するビジネスオペレーションを効率化するうえで重要な社内投資を削減した。

 数字は最初から真実を伝えていたのに、CEOは自分の気に入らない現実を受け入れず、それに基づいて行動しなかった。その結果、従業員と顧客に雪崩のように問題が発生し、ビジネスの将来価値に悪影響を与えた。

 これは、まったく別の展開になっていたかもしれない。CEOと事業部長が協力して、望ましい成長とコストを取り戻すコンティンジェンシープランを立てることができたはずだ。しかし、CEOが現実を受け入れようとしなかったために、有意義な議論や変化の可能性が失われてしまった。