従業員のメンタルヘルスにおける企業の役割

 従業員は、完全に孤立した状態でメンタルヘルスの問題を体験するわけではない。よくも悪くも企業が一定の役割を果たす。

 ●メンタルヘルスにネガティブな影響を与える職場要因がある

 現在の働き方は持続可能ではく、私たちのメンタルヘルスを傷つけている。最近まで、こうした会話の中心を占めていたのは、メンタルヘルスの既往症や関連するスティグマだった。だが、その焦点は、仕事があらゆる人のメンタルヘルスに影響を与える点に、ますますシフトしている。

 驚嘆すべきことに、自分のメンタルヘルスにネガティブな影響を与える職場要因が、少なくとも一つあると答えた人は84%にも上った。若い世代と過小評価グループでは、さらに深刻な影響を受けていた。

 すべての回答者に共通して最も多かった要因が、感情的に疲弊する仕事(たとえば、ストレスが多い、圧倒される、退屈に感じる、単調である)だ。そして、それはコロナ禍でいちだんと悪化した。僅差で次につけた要因は、ワークライフバランスだった。

 コロナ禍以降、最も悪化した他の職場要因としては、質の低いコミュニケーションや、同僚やマネジャーとのつながりやサポートを感じられないことが挙げられている。これは、リモートワーク中心の環境では驚くことではないかもしれない。

 米国文化の大きな特徴であるワーカホリック(仕事中毒)は、コロナ禍の問題に対処するために悪化する一方、従業員のバーンアウト(燃え尽き)を増やすことにつながっている。

 ●従業員のメンタルヘルスに対する企業の投資が、ある程度増えた

 企業は必要に迫られ、ようやくメンタルヘルス支援の投資を増やすようになったが、企業文化の真の意味で変えるには至っていない。

 筆者らの調査では、コロナ禍が始まって以来、有給休暇の追加措置や全社的なメンタルヘルスデーの設置、メンタルヘルス研修の実施など、企業が提供するリソースが増えたことが明らかになった。

 さらに、従業員の側でも、このように会社が提供するリソース、とりわけ日常的な支援策を幅広く利用するようになった。たとえば、休憩時間の延長や休憩回数の増加、勤務日にセラピーを受ける時間の確保などだ。休日や休暇の取得率は、2019年とほぼ変わらなかった。

 これは、従業員が実際に利用した支援策と、企業が提供した支援策(応急手当てとして一時的な解決策であることが多い)の間にギャップが存在することを示している。実際、回答者が最も望んだ(31%)リソースは、メンタルヘルスに対するよりオープンな企業文化だった。