●新しい精神的筋肉を鍛える

 自分を取り巻く破壊的状況は、みずから計画したものであるという意識を持たせることで、前頭前皮質を活性化して恐怖を遠ざけるとともに、創造的なプロセスに自分やチームがどのようにアプローチするか、その方法を明確化する。

 そして、クロストレーニングで自分の脳を鍛えて、従来とは異なる新たな活動にどっぷりと浸かることにより、ストレスの大きな時期にも創造性をよりいっそう高めることができる。

 研究によれば、自分が専門とする主要領域から踏み出すと、創造的思考を高めることができるという。ある研究では、注目する領域を多様化させることで、認知的柔軟性が高まり、より柔軟にアイデアが湧き、創造性が発揮されることが明らかになっている。

 ソーシャルメディアのマーケティングコンサルタントで、作曲家でもあるマリー・インコントレラは、この方法を選択した。Thinkers50(世界で最も影響力のある経営思想家)の一人であり、『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌にもたびたび寄稿しているドリー・クラークとコラボレーションを行ったことで、みずからの独創性に火をつけ、従来の核を成す活動領域とは異なる方向に展開する大きなきっかけになったという。

 コロナ禍の間、インコントレラ(作曲を担当)とクラーク(脚本と作詞を担当)は、新しいミュージカル作品『アブソリュート・ゼロ』を書き上げた。レズビアンのスパイが主人公の物語で、アップルズ・アンド・オレンジズ・アーツが運営するシアターアクセラレータープログラムのサポートにより完成した。目標は、2026年までにブロードウェイで上演を果たすことだ。

 ●つながりを増やす

 個人も組織も、長期にわたるストレスと破壊的状況、不確実性の影響を受けて、独創性が失われないように奮闘している。

 ダイバーシティ・アンド・インクルージョンの戦略家であり、エグゼクティブコーチのローズ・オルベラ=マーシャルによると、リモートワークで生産性は著しく向上したものの、従業員はほぼ1日ズーム会議が続くことも多く、ブレインストーミングの機会が減り、創造性も低下したという。

 人間の脳の仕組みを利用して、この課題を克服する方法の一つとして、「社会的ホルモン」であるオキシトシンの分泌をうながすやり方がある。

 オルベラ=マーシャルのチームは「基本に戻る」ことで、これを成し遂げた。ズーム会議の冒頭、参加者がタスクとは無関係の会話をする時間を設けて、同僚同士が個人的なつながりを構築できるようにしたのだ。彼女はまた、少なくとも2週間に1度、アジェンダなしでチームメンバーと1対1でつながる時間を持つようにしているという。

「こうしたささやかな時間が、つながりや心理的安全性を生み出す瞬間を目の当たりにしてきた。チームメンバーが互いの関係を快適に感じるようになれば、会議はずっと楽しくなる」とオルベラ=マーシャルは語る。

 この種の社会的つながりは、創造性を強力に後押しする。その一因として、創造性の根源を成す相互信頼が増すからだ。

 週に2回か3回、会議の冒頭に前向きかつ個人的な交流の時間を設定すると、アイデアの共有が著しく活発になることに、オルベラ=マーシャルは気づいた。

「誰もがもっとリラックスして仕事に臨めるようになれば、それが副交感神経系を活性化して、新しい多様なアイデアが生まれやすい環境がつくられる。その結果、参加者のモチベーションと創造性が高める」と彼女は語る。

 オルベラ=マーシャルは、このような戦略を採用することで、自社のリーダーが社会性と感情面のサポートを行い、個人の創造性だけでなくチームとしての創造性も育めるよう支援している。

 このアプローチは、ストレスホルモンを軽減し、向社会的行動を促すホルモンを増やして、脳の神経化学的なバランスを改善させる。そうすることで、不確実性が続く中で破壊された創造性の神経回路のつながりを再建する一助とするのだ。

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 本稿で紹介したような積極的な方法を取れば、破壊的状況から生じるストレスを創造性の燃料に変え、人間の進化に起因する恐怖反応を抑えて、創造性に関する神経回路を育み、再活性化することができる。

 自分が創造性のエネルギーを少しばかり必要としている時はいつでも、特にこれまでになく難しい試練の時には、これらのアイデアを実践してほしい。結局のところ、急速な変化や破壊的状況、そして世界的に不確実性が高まっている時期にこそ、大胆かつ勇敢な創造性が最も必要とされるのだ。


"4 Ways to Spark Creativity When You're Feeling Stressed," HBR.org, October 01, 2021.