不安なリーダー

 どんなリーダーでも自信喪失に陥るものだが、自己不信のような感覚でがんじがらめになる人もいる。他人が自分をどう思っているのか、自分が失敗するのではないかと不安に襲われるのだ。

 多くのリーダーは、自信に満ちた真剣な顔と落ち着いた態度で、こうした奥底の感情を隠している。過剰なほど人あたりがよく、親切に振る舞う人もいる。好意を示して他人の関心を得ることによって、失敗や拒絶に対する自分の不安を軽減しようとしているのだ。

 このようなリーダーは戦略上、特に有害な影響を及ぼす。自分よりも積極的なリーダーに利用されやすく、おだてられて、提示されたすべてのアイデアを受け入れることになる。

 さらに、失敗を恐れるあまり「分析麻痺」に陥って、自分にしか見えないリスクに延々と策を講じる人も少なくない。かなり昔の失敗で、そこからすでに多くのことを学んでいても、過去の失敗を根拠にリスクを懸念する。

 リンダ(ロンの元クライアント)もその一人だ。彼女は成長中のクリーンエネルギー企業の最高マーケティング責任者で、さまざまな新しい市場に対応するために、会社のブランドを再構築する責任者として採用された。経歴はその役割に十分だったが、失敗を恐れるあまり、周囲の信頼を失っていった。

 CEOはリンダが十分に練り上げたアイデアや提案を携えてくることを期待していたが、彼女は、チームを巻き込んで当事者意識を引き出すという名目で「草案」を提出した。CEOはその意味を正しく解釈した──承認と肯定に対するリンダの飽くなき欲求である、と。

 彼女の不安は、市場投入を何回も延期させ、ブランドメッセージを不明瞭にした。幸い、ロンは彼女の不安の源を探り、方向を転換することで、彼女はある程度、巻き返すことができた。

 自信喪失の不安感に悩まされている人のために、戦略への影響を軽減する方法がいくつかある。

・不安の核心を突き止める:コーチやセラピストの助けを借りて、不安が広がるのは、より深いところにある未解決の問題を示唆していることを理解する。リンダは、他人に認められたいという欲求の原因を明らかにして、自分の能力をより客観的に把握することができた。

・最悪のシナリオと最善のシナリオを準備する:不安を抱えたリーダーは、差し迫る失敗を大げさに吹聴するのではなく、信頼できるデータを用いて、検討中の戦略がもたらしうるさまざまな結果を、現実的なシナリオとして構築すべきだ。

・会話をチャンスに変える:うまくいきそうにないことや、他人から否定的な印象を持たれるかもしれないという思いに固執するのではなく、自分が追求しているチャンスのよい面に目を向ける。予想される最善の結果は何か。組織にどのようなメリットがあるか。あなたは肯定的な評価を得られるだろうか。

・過去の成功体験を振り返る:過剰な不安を打ち消すには、過去の成功体験を率直に振り返ることが、一番の近道かもしれない。同じような選択をしてうまくいったことはあったか。その経験から得た教訓を今回に活かせそうか。信頼できる第三者に、自分の過去を冷静に検証してもらうのもよいだろう。

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 すべてのリーダーは、性格に何かしら欠点を抱えている。そうした人間性の部分は、リーダーの弱さにもなり、リーダーとして率いる人々とのつながりを生むこともできる。

 ただし、傷があまりにも大きくなると、リーダーとして描くビジョンや実行している戦略を破壊しかねない。「どうするか」ではなく、「いつ、どうするか」を考えなければならない場面もある。そうした野心を実現しようとして、競争環境や社内で、すでにさまざまな障害に直面しているだろう。自分自身が障害になってはいけないのだ。


"Every Leader Has Flaws. Don't Let Yours Derail Your Strategy," HBR.org, September 29, 2021.