衝動的なリーダー

 輝かしい成功事例を手当たり次第に導入する「シャイニーオブジェクト症候群」のリーダーは、誰でも心当たりがあるだろう。新しいアイデアや最新の流行がもたらす刺激の誘惑に勝てない人々だ。

 自分が開拓者になり、アドレナリンを放出する興奮がたまらない。ただし、その過程で組織を疲弊させ、資源を過剰に投入し、顧客や株主に大風呂敷を広げてしまう。派手で大げさな宣言をして、人々を興奮の渦に巻き込もうとすることも多い。

 しかし、「先週の最大のアイデア」を捨てて、次のアイデアを追いかけるというパターンを繰り返していることに気づくと、その衝動もすぐにしぼむ。最後まで待ってやり遂げるほど、集中が続かないのだ。

 エドアルド(ロンのクライアント)は、世界的なアパレル企業の事業部長だった。新製品の発売やファッショントレンドの牽引など、起業家としての成功に誇りを持っていた。

 ただし、衝動的な性格を抑えて、戦略をやり遂げるために必要な規律を守ることができず、大きな損害を被った。小売店のバイヤーはエドアルドのブランドに対する信頼を失い始め、倉庫には在庫があふれた。

 必死になればなるほど、エドアルドは衝動的になった。結局、社内の別の場所で彼のクリエイティブな強みに適した役割を見つけることが、最善の解決策となった。

「次の新しいもの」にあらがえない人は、たとえば次のようなアプローチを考えてみよう。

・戦略的意思決定に時間とデータを組み入れる:意思決定のプロセスに、立ち止まる要因(ゲーティングファクター)を設定する。特に戦略的意思決定において、ファクトベースで利害が競合する要因を他人に提示してもらい、適切な議論のための時間を十分に確保する。これにより、行動に移す前に自分のアイデアを検証することができる。

・戦略プロセスに規律を追加して、他人に舵を任せる:パーティに行った時は酒を飲まない人に車の鍵を渡すように、自分の直感でクリエイティブなアイデアをたくさん生み出すことはできても、戦略プロセスを担当するには適任でないことを、自分で認識することが重要だ。あなたが自然と避けるような方法で戦略的機会を見出し、検証して、操縦することができる、規律のあるリーダーを味方につける。そうすれば、あなたの意見がオープンに検証されて、その過程で信頼を築くことができる。

・リスク要因や必要なリソースを十分すぎるほど重視する:自分のアイデアに内在するリスクには、特に慎重になること。実行に移すために必要な能力とリソースの規模を、時間をかけて正確に特定する。リスクを完全に理解するために、悲観的な意見にもよく耳を傾ける。

・アドレナリン中毒の原因を突き止める:新しいアイデアが湧き出てくることと、その結果としてドーパミンに酔うことには中毒性がある。自分のモチベーションを掘り下げて、その熱情によって満たされるかもしれない、より深い欲求を知ろう。エドアルドのアイデンティティはファッションのパイオニアであるということに深く根ざし、既存のアイデアをもとにするという考え方が無力感を招いていた。