●コストを考える

 相手に「ノー」と言う前に、辞退することが本当に正しい判断なのかを確かめる。機会コストを考えるのだ。

 たとえば、あなたが上司の新しい取り組みに「参加する」と答えたものの、いまになって二の足を踏んでいるとしよう。その場合、重要な仕事の優先順位に対して、そのプロジェクトの重要性がどのようなものか評価する。

 その取り組みに参加することで、あなた自身が社内のネットワークを広げたり、社会関係資本を構築したり、新たなスキルを習得できたりする場合は、犠牲を払う価値があるだろう。

 しかし、私生活や現在進行中のプロジェクトに何らかの影響を及ぼすなど、コストが便益を上回る場合は、辞退するほうがよい。

 ●視点を変える

「イエス」と引き受けたにもかかわらず、後になって「ノー」と言うことで、無責任だと思われるに違いないという考えをどうしても拭えない場合、完遂できないと知りながらその仕事を続けることが、逆に身勝手で不適切であるという事実を受け入れなくてはならない。

 相手に約束することで、自分は度量が広く、人の役に立っていると感じるかもしれない。しかし、約束を最後まで果たせないなら、優れたパフォーマンスも、個人的な幸せも、強固な関係も生まれない。

 加えて、潔く辞退することで、ポジティブな特性を示すこともできる。あなたが優先順位の判断や時間管理に長け、透明性の高いコミュニケーション能力を持つ人物である証左になる。これらはすべて、強力なリーダーシップに必要な特性だ。

 ●そつなく、しかし正直に伝える

 メッセージを伝える時には、余計な説明なしに、明確かつ堂々と伝える。つまり、単刀直入かつ思慮深く、何よりも正直であることを心がけるのだ。

 たとえば、親しい同僚に誘われていた委員会への参加を辞退する場合には、次のように伝えるとよい。「先月、委員会に参加できると答えた時は、素晴らしい仕事ができる余裕があると思っていました。ところが、予定表をよく確認してみたところ、自分が手を広げすぎていたことに気づきました。動かすことのできない仕事の約束がすでにいくつか入っているのです。ですから、委員長として参加することができなくなりました」

 辞退する理由や根拠を端的に伝えることで、あなたの撤回がより受け入れられやすくなるだろう。たとえば、次のように説明できる。「委員長として参加すると、私は確かに言いました。しかし、その後で、予期していなかった大きなプロジェクトにアサインされたのです。そのため、辞退しなくてはなりません」

 上司の新しい取り組みへの不参加を決めた場合には、こう伝えるとよいだろう。「自分の優先事項を再検討した結果、この新プロジェクトに関わると、私自身のメインの職務がおろそかになるおそれがあると思い至りました。そうなっては、自分にとってもチームにとっても、正しい決断とも最善の決断ともいえなくなります。ですから、申し訳ありませんが、『イエス』を『ノー』に変更させてください」