●とっておきの失敗談を3つ用意する

 過去の失敗談を語ることは、聞き手と良好な関係を築き、失敗しても問題ないという雰囲気をつくり出し、聞き手との絆を深める効果がある。とりわけ、失敗した後で、最後にはそれを跳ね返して成功できたというストーリーを語ることができれば、聞き手のやる気を喚起し、頑張り続けるよう促せる。

 カールは、直近の幹部ミーティングで勇気を奮い起こして、過去の失敗談を披露した。誰もが尊敬する同僚の前で、ひどい失敗をしでかしたエピソードだ。これにより、リスクを取って行動するのが当たり前だという空気がチーム内に生まれた。弱い部分を見せてくれてありがとうという感謝のメッセージを寄せるメンバーもいた。

 あなたも、とっておきの失敗談を3つ書き出してみるといい。そして、そのストーリーを安全に披露できる機会がないか考えてみよう。

 ●即興で自分の弱さに関するエピソードを話に盛り込む

 研究によると、私たちは自分と感情的な絆を育もうと努力してくれたリーダーのことを思い返すと、脳内でポジティブ感情が高まり、社会的つながりを感じやすくなるという。即興で質問に答える時、自分の弱さに関するエピソードを素早く盛り込めるようにしよう。

 そうした話をする際は、「私が感じているのは」「この話をするのは勇気がいるのですが」「この件をお話しすべきか躊躇したのですが」などの言葉で切り出すとよい。それにより、あなたの思考のカーテンが開け放たれて、聞き手との絆が生まれやすくなる。

 ●いま気になっていることを話す

 カールは、月例のスタッフミーティングの冒頭で、個人的なストーリーを語るようにした。世界の出来事や最近のニュース、ビジネス界の話題の中で、自分が特に強い印象を受けた話題について語っている。

 そうしたストーリーは、前向きなものばかりではない。しかし、聞き手から寄せられる感想を見ると彼の話は歓迎され、メンバーはそのおかげでカールとの距離を近く感じられているようだ。いまのカールは、ミーティングの前に数分かけて準備し、メモを用意することで、自分のプレゼンに温かみと人間らしさを与えることができている。

 ●心揺さぶられるストーリーを研究する

 TEDの講演やポッドキャストを聞いて、ほかの人たちがどのように強力で説得力のあるプレゼンをしているか研究しよう。どのようなストーリーを聞いた時、あなたは特に話し手と結びつきを感じるだろうか。本当の自分を隠している印象を与えず、人間らしさを感じさせるストーリーを語る人たちは、どのような行動を取り、どのような話をしているのか。

 自分が気に入ったテクニックをメモして、プレゼンでそれを実践する練習をしよう。まずは、リスクの少ないプレゼンから始めればよい。

 プレゼンに個人的なストーリーを盛り込むことで、あなたが絆を育める聞き手の数が多くなり、あなたのメッセージが届く範囲も広がる。リーダーが本当の自分を隠さず、親しみやすく、メンバーのやる気を鼓舞できれば、ビジネス上の成果も向上する。そして、チームのメンバーも、自分も個人的なストーリーを語ってもよいのだと思うようになる。

 カールが新しい方法論を実践し始めて数カ月が経つと、以前よりも親しみやすくとなったと、部下に言われるようになった。そして、カールが率いるチームのメンバーは、それまでよりもグループのビジョンとの結びつきを感じられるようになった。

 リーダーは、堅苦しい雰囲気を打破するために努力し、実務志向の側面ばかりでなく、自分の人間的な側面も見せるようにしよう。そうすれば、メンバーはそのリーダーについていこうという意欲が高まるだろう。


"To Inspire Your Team, Share More of Yourself," HBR.org, September 29, 2021.