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リーダーとして信頼されるためには、自分の感情を制御し、冷静に振舞うことが重要だとされていた。しかし実際には、パーソナル(個人的な)ストーリーを通じて自分の弱さをさらけ出すことで、部下との信頼が育まれ、仕事に対するやる気を引き出すことにつながる。本稿では、個人的なストーリーの効果を高めるうえで有効な4つのステップを紹介する。


 筆者の顧客であるカール(仮名)は、自分が率いるチームのモチベーションを高めることに苦労していた。

 カールは微笑んでいる時ですら、やや厳格な印象を持たれるような人物だ。チームミーティングで話す時、プレゼンテーションのスタイルは冷静で、慎重な性格が強かった。部下との1対1のミーティングでは、聞き上手という評価を得ていて、思いやりのある上司として知られていた。

 しかし、大勢が集まる場で話をする時は、よそよそしい態度を取ることが多かった。難しい問いをぶつけられると、じっくり時間を掛けて自分の考えを述べるのではなく、すぐに解決策を示そうとしたり、単に会社の方針を繰り返したりした。

 それがどのような結果をもたらしたのか。聞き手は、カールのことを堅苦しくて、本音を隠していると感じていた。メンバーのやる気をかき立てる能力についても、部下からの評価は低かった。

 かつては、有能なリーダーという印象を持たれるうえでカギを握る要素は、プレゼンから「自己」を削ぎ落し、どうにかして感情を制御することだと思われていた。しかし、次第に明らかになってきたように、「この人についていきたい」と部下に思わせるためには、リーダーがみずからの弱さ(バルネラビリティ)やユーモアや謙虚さを表現した、パーソナル(個人的な)ストーリーを語ることが有効だ。聞き手はリーダーを生身の人間として見るようになり、やる気もかき立てられるのだ。

 なぜ、そのようなことが起きるのか。それは個人的なストーリーを語ることで、聞き手との間に信頼を育めるからだ。

 研究によると、信頼を生む主な要素は、自分らしさ、論理、共感の3つだという。私たちは、本当の自分を隠しておらず、他者に共感の精神を持っていると思える人物を信頼する傾向がある。個人的なストーリーを語ることで本当の自分をさらけ出している印象を生み出し、自分を人間らしく見せることはメンバーとの信頼を育むための強力な手段になりうる。

 幸い、個人的なつながりをさらに深めることは、学習を通じて習得できるスキルだ。あなたがプレゼンに人間らしさを加えて、チームのメンバーのインスピレーションを高めるには、以下に紹介する4つのステップが参考になるだろう。