地位の低い従業員が不利になる

 パンデミックの中の明るい兆しは、リモートワークへのアクセスが民主化されたことだ。パンデミック以前は、リモートワークは高給な専門職に限られていた。しかし、今回のパンデミックで、事務職や政府の仕事、デスクワーク、電話やインターネットを使った仕事など、地位が低いとされる多くの職業でもリモートワークが可能であることがわかった。

 だが残念なことに、非常に多くの雇用主が、高賃金の従業員のために「どこでもできる仕事」をつくる一方で、低賃金の従業員がリモートワークをする権利を奪っているという報告が後を絶たない。

 筆者らのヘルプラインには、リモートワークを1年以上うまく続けてきた従業員が、突然職場に戻るよう命じられたという話が寄せられた。なかには、生産性が向上した具体的な証拠を持っている人もいる。

 エリートはどこでも仕事ができ、非エリートはフルタイムでオフィスに拘束されるという新たなカースト制度をつくれば、雇用主にとって貴重な、企業固有の知識を豊富に持つ従業員の離職率を高めることになる。

 低賃金の労働者は高賃金の労働者よりも、物価の高い都市にあるオフィスから離れた場所に住んでいる傾向が高く、通勤時間が長いため、リモートワークが非常に望まれている。

 また、低賃金労働者はナニーや託児所に頼ることが少ない。代わりに、多くの夫婦はタッグを組んで、母親と父親が異なるシフトで働いている。こうした家庭では親同士がほとんど顔を合わせないため、離婚率が国の離婚率の3~6倍にもなる。通勤時間の1~2時間を家族との時間に変える機会は多くの従業員にとって重要で、そのことを正しく理解している企業への忠誠心は高くなる。

意図しない人種的影響

 過去の過ちを経て、企業は意図しない人種的影響に注意を払うようになっている。しかし、リモートワークをする従業員のうちオンサイトワークに戻ることに関心があると答えた白人従業員は、黒人従業員の7倍にも上る(白人が21%、黒人が3%)。

 その大きな理由は、黒人労働者がよりネガティブな対面の職場環境に直面していることだ。在宅勤務では、64%がストレスをよりコントロールできるようになり、50%が組織に対する帰属意識が高まったと回答している。

 ある友人は筆者にこう言った。「パンデミックは恐ろしいものだが、リモートワークは私にとって希望の光だ。白人たちと日々接するのは疲れてしまう。ほっとしている」。職場のおしゃべりは、ある人にとってよいものでも、他の人にとってはそうではない。

 考えるべき人種的側面はもう一つある。最新の家計意識調査によると、黒人とラテン系の従業員は労働人口の約30%を占めるが、過去1カ月間に子どもの世話をするために離職または失業した人の50%を占める。

 有色人種は新型コロナウイルスのパンデミックによって、より深刻な影響を受けている。黒人、ラテン系、先住民は、新型コロナウイルス感染症で入院する確率が白人の約3倍、死亡する確率が約2倍だ。そのため黒人やラテン系の親たちは、対面式の学校教育とオンサイトワークに戻ることを強く望んでいない。有色人種を労働力から排除したくないのなら、リモートワークの利用を広げるべきだ。

女性の離職

 パンデミックの影響で女性の労働力が著しく低下し、女性の労働力参加率は1980年代以来の最低水準に落ち込んでいる。その主な原因の一つは保育だ。パンデミック下で安定した保育サービスが不足しているため、母親たちは仕事を辞めざるを得なかった

 当然ながら、永続的なリモートワークにも保育サービスは不可欠だ。しかし、たった2日前の通知で職場に戻らされたといった報告が後を絶たない。これでは、保育サービスを手配する時間もない。

 パンデミックのために、保育サービスの手配はこれまで以上に困難かもしれない。パンデミックの影響で最大で450万人分の保育枠が永久に失われた可能性があり、すでに深刻だった問題が悪化している。パンデミック以前から、米国ではほとんどの人が「保育砂漠」(3人以上の子どもに対し保育枠が1つしかない)の地域に暮らしている。

 保育サービスを見つけられたとしても、その費用を捻出できない場合もある。パンデミック以降、保育費用は40%も増加している。子どもや高齢者のケアのための代替手段を準備する時間を十分設けることが重要だ。