慢性疼痛はリーダーシップの課題である

 慢性疼痛は明らかに、従業員と企業の両方に影響を与える問題だ。しかし、慢性疼痛が実際にどの程度、広まっているのか、慢性疼痛を経験している従業員をどのように支援すればよいか、マネジャーはどこまで理解しているだろうか。

 筆者らは2020年9月に、米国のビジネスリーダー500人を対象に慢性疼痛に関する調査を行った。その結果から、慢性疼痛を抱える人をどのようにマネジメントすればよいか、リーダーの認識と知識が限られていることがわかった。

 リーダーの80%は慢性疼痛が組織の問題であると理解していた。その一方で、慢性疼痛を抱える従業員に対処する方法を知らない人も80%いた。そして77%の人が、リーダーとして何ができるのかを知りたいと考えていた。

 筆者らの研究と、職場におけるメンタルヘルスの問題など、他の慢性的な症状への対応についてすでにわかっていることを踏まえ、エビデンスに基づく予防、介入、支援の確立されたモデルを用いて、以下の5つの戦略を提案する。

 1. 慢性疼痛を抱える従業員の声に耳を傾けて、サポートの準備をする

 慢性疼痛を抱える従業員をどのようにサポートできるか、経営者に意見を求めたところ、最も多くの人が挙げた戦略は、話を聞くことと効果的なコミュニケーションだった。

 一方で、多くのリーダーが、慢性疼痛や疼痛生活障害について従業員と話し合うことに抵抗を感じたり、準備ができていないと述べたりしている。従業員も非難や差別、あるいは職を失うことを恐れて、話すことをためらっているかもしれない。しかし、ほとんどの場合、そのような会話は効果的な解決策を見つけるうえで重要なきっかけになる。

 従業員に痛みに関する質問をしたり、痛みを打ち明けるように求めるなど、慢性疼痛について情報を共有するように圧力をかけないこと。ただし、従業員が会話を求める場合は、耳を傾けてサポートしよう。

 さらに、リーダーが安全衛生を重視していることがわかるだけで、従業員は慢性疼痛の苦悩を安心して打ち明けやすくなる。

 たとえば、職場の安全衛生をどのように改善できるかについて、従業員の意見を聞くことから始めるのもよいだろう。リーダーとしてどのように対処すればいいのかよくわからなければ、痛みに関する不安を解消するためにどのような支援ができるか、と従業員にたずねるだけでも、手助けしたいという気持ちが伝わるはずだ。

 2. 仕事に関連する慢性疼痛の予防を重視する

 筋骨格系の怪我を減らすために、床に物を置く習慣をやめようと、人間工学の専門家は助言する。床に物があると、それを拾うために屈むことが多いからだ。腰ではなく膝を曲げるようにと長年言われているが、怪我は減っていない。そもそも屈む必要性をなくすことが、よりよい解決策なのだ。

 慢性疼痛の原因が職場にあることは珍しくない。重いものを持ち上げる、1日中立ちっぱなしで働く、無理な姿勢で作業をするといった仕事は、痛みを引き起こしたり、悪化させたりしやすい。

 作業環境に注意を払い、潜在的な危険を特定して排除することにより、慢性疼痛を未然に防ぐこともできる。社内に労働安全衛生の専門家がいる場合は、ともに職場の実施検証を行い、痛みが発生する可能性のある状況を特定する。