●了解したら、その時を全力で過ごす

 カリスマ性は「いまこの瞬間を全力で生きる」かによって決まるため、相手に自分がどう映っているかを想像するのではなく(社交不安を抱えていると、その像はかなり歪んでしまうことがある)、相手の話に真剣に耳を傾けることを忘れてはならない。

 心がすり減ったら、自分を思いやるセルフコンパッションを実行する。そして、自分があまりにも洗練された印象を与えると相手を萎縮させること、反対に「プラットフォール効果」と呼ばれるように、何か失敗したり、失態を見せたりすると親近感や好感度が高まることもあると理解しよう。

 社交不安はないが、単に人付き合いが苦手で、ネットワーキングよりも仕事に集中したいという人も、自分のコンフォートゾーンではなく、自分の価値基準に基づいて行動したほうがよい場合がある。

 心理学者のセス・マーゴリス(ジョンズ・ホプキンス大学医学部准教授)とソニア・リュボミアスキー(カリフォルニア大学リバーサイド校特別教授)は、幸福度に関する研究で、参加者に対して最初の1週間は控えめに、次の1週間は社交的に振る舞うよう指示した。参加者は、もともと外向的な性格であるかどうかに関係なく、外向的な行動を取った後はポジティブ感情や相手との絆をより強く感じたという。

 ●労力を減らす

 自分の価値基準や心を動かすものが明確になったら、弁証法的行動療法のモットーである「回避の回避」を取り入れる。つまり、不誠実に「いいですよ」と答えるのをやめ、乗り気ではない提案を先延ばしにせず、自分の限界を正直に伝える。

 ただし、優しくあることが大切だ。相手にとって、人に声をかけるのは勇気がいることであり、いまは特に弱気になりやすいからだ。

 返事に要する以上の長い時間、空白のウィンドウをじっと眺めて悩むより、状況に応じて調整できる丁寧なメールのテンプレートを用意しておく。メッセージを調整する際には、自分の忙しさだけをアピールするのではなく、相手の気持ちを尊重する。相手への理解を示し、その人との関係性に適した内容を考えよう。

 メッセージの中で次のような行動を取ることが大切だ。相手を温かく受け止め、正直に意向を伝え、個人的に貢献できなければ代わりに何か申し出をする。たとえば、メールで人を紹介する、いつなら話ができると伝える、あるいはシンプルに相手の幸せを祈る。次のように書いてはどうだろう。

「ご連絡をいただき、またこの大変な時に私のことを思い出してくださり、ありがとうございます。お元気そうで何よりです。このところ、手に余るほどのお誘いやご依頼をいただいております関係で、直接お会いしてのネットワーキングはお休みしております。とはいえ、連絡を取り合って、何かお役に立てればと思いますので、電話でお話ししませんか」

 リアルタイムでの会話を避けたければ、次のテンプレートをアレンジして使うとよいだろう。

「お元気でお過ごしのことと思います。私はいま余裕がなく、ネットワーキングの会合を控えております。ご理解いただければ幸いです。資金調達のラウンドが成功するよう、応援しています」。もし余力があれば、「どのようなお話をされたいのか、もう少し情報をいただければ、お手伝いできそうな場合、ご連絡いたします」と付け加えてもよいだろう。

 相手との関係性から考えて理不尽な依頼をされた場合は、無視してもよい。それは、自宅を売りに出していないのに、買いたいという人の申し出を無視するのと同じだ。

 ●戦略を練って、よりよい解決策を考える

 自分の価値基準と、はっきりと返答する方法を考えるのと同時に、より少ないエネルギーで相手とつながる方法を模索する。

 たとえば、電話で話すほうが楽な人は、2週間に1度、金曜日の午後に一気にまとめて情報交換や近況報告の電話をかけることにするのはどうだろうか。たとえ電話であっても、形式的な会話ではなく、マルチタスクを避けて相手の話に集中すれば、こちらの熱意や本当の温かさが伝わるものだ。

 最後に、自分は自己中心的なのではなく、思いやりを持って依頼に対処しているということを肝に銘じよう。アン・モロウ・リンドバーグが著書『海からの贈り物』の中で思慮深く書いているように、「私の人生は、私の心が反応するすべての人々の要求を実行に移すことはできない」。

 ズームからIRL(現実世界)での交流に移行する中、私たちは重要なこと、つまり自分の価値基準にズームインして、それを優しさと誠意をもって伝えよう。


"How to Say No to "Grabbing Coffee," HBR.org, July 21, 2021.