暫定プランの策定

 注意すべき落とし穴について理解したら、いよいよ計画を立てる。メンバー全員の勤務形態が満たすべき基本原則を決める。この原則を使って、リーダーとして重要な境界線を定め、そのうえでメンバーの都合に合わせてパーソナライズできる余地を残しておく。

 たとえば、「顧客第一」という原則を定めた場合には、それぞれのメンバーが希望する働き方を、まず顧客に与えるインパクトに基づいて評価することになる。

「一緒に過ごす時間が重要だ」という原則であれば、チーム全員が同時に出社する日を週1回設けることができるだろう。「集中する時間を見つける」という原則に基づいて、それぞれが最も生産性が上がる環境で、誰にもじゃまされずに仕事をする時間を、半日単位で週3回ブロックさせることも可能だ。

 こうした基本原則を伝えることから会話を始めると、有用な境界線を示しつつ、チームメンバーはある程度の自由度を持ち、自分の都合に合わせて計画を立てることができる。

 リーダーとしての観点から、ここまでは譲れないというラインが明確になったら、チームと原則を共有し、それぞれのメンバーと個別に話す時間を決める。事前に宿題を出し、自分にとって重要なことや希望するオフィス復帰の形をいくつか考えておいてもらう。

 チームメンバーには、心の準備をして、それぞれの希望をしっかりと伝えてもらいたいため、この事前告知が重要になる。何も知らされていない状態で話をいきなり切り出すと、自分がどうしたいのかが明確でなかったり、要望の伝え方に自信が持てなかったりするからだ。このような重要な話をするのに、不意打ちはやめよう。

 メンバーの希望を聞く話し合いの場では、基本原則について質問がないか確認することから始める。何が変更不可で、どこに工夫の余地があるかを明確にする。

 次に、「では、出社はいつにしますか」と一足飛びに聞くのは避け、メンバー自身が望む勤務形態について話してもらう。次のような聞き方がよいだろう。「あなたがオフィス復帰についてどのように考えているか、ぜひ聞かせてください。あなたにとって重要な判断基準は何でしょうか」

 これはオフィス復帰に限らず、論争に発展する可能性がある議論であれば、いずれにも使える優れたテクニックだ。解決策を出し合う前に、相手にとって何が重要かを互いに理解し合えば、即座に拒絶されるような考えを提案せずに済み、ずっと効率的に、相手にとって魅力的な提案を出すことができる。

 筆者は、これは代数の問題を解くのに似ていると思っている。互いの方程式がわかれば、後は両方の式を満たす未知数を求めればよいからだ。

 双方の判断基準が揃ったら、勤務形態を暫定的に決める。基準の範囲内で、可能な限り柔軟性を持つことを忘れてはならない。

 たとえば、チームの管理スタッフの1人が、一部在宅勤務を切望しているとする。管理スタッフがチーム体制を組めば、オフィスで行う業務を互いにカバーし合うことが可能になる。そうすれば、それぞれが週1日か2日はメールを介して在宅勤務を行い、オフィスとは違ってじゃまの入らない環境で効率的にタスクに従事することができる。

 物事をクリエイティブに考えよう。不可能なことを追い求めるのではなく、可能な範囲内で最適解を見出すのだ。