●思いやりを持つ

 どのようなメッセージを伝えるにしても、いかなる便宜を図ることが可能または不可能だとしても、実際にどのようなポリシーを適用するにしても、思いやりを持って行動することを忘れてはいけない。

 思いやりは、不安の解毒剤になることが多い。医療現場で実施された調査によれば、医師と患者が交わしたわずか40秒間の思いやりに満ちたやり取りが、患者の不安と健康の回復に相当の影響を与えたと、ダットンは指摘している。

「小さなことで構わないので、従業員と向き合う方法を見つけることが大切です」と、ダットンは言う。仕事の調子はどうか、あるいは仕事以外の面ではどうかなど、声をかけ続けよう。

 あなたが自分の近況について話をすることで、従業員の側でも自分もそうしてよいのだと思うようになる。特に、仕事のスケジュールに変化が生じた時は、バーンアウト(燃え尽き症候群)やストレス過多の兆候が見られないか、目を光らせなくてはならない。

 正直に言えば、優秀なマネジャーのほとんどは、パンデミック以来、こうしたことを実行している。ただでさえ過酷な時期に、チームメンバーのウェルビーイングを配慮するという責務が加わり、むしろ疲労困憊しているかもしれない。

「共感疲労は、現実に存在するのです」と、ダットンは言う。それゆえ、チームメンバーだけでなく、自分自身をケアすることが不可欠だ。自分にバーンアウトの兆候がないか、注意を払い、必要ならばメンタルヘルスのための休暇を取る。

 ダットンによれば、ケアする仕事にはプラスの側面もあり、相手に思いやりを持つことで「本人も元気になり」、それによって「双方ともに力づけられる」という研究結果もあるという。

 今回のパンデミックがもたらした、ささやかな希望の光は、さまざまな職場でメンタルヘルスについて話をすることが、以前よりも受け入れられるようになったことだ。

 私たちの多くがオフィスに戻ったからといって、このテーマをめぐる会話を閉ざしたり、思いやりをなくしたりすべきではない。マネジャーは、従業員がどのような体験をしてきたか、あるいは現在も体験しているかについて、自分が全容を把握しているわけではないことを、肝に銘じる必要がある。

 最近、ある友人が次のように言った。「どんなワクチンも、私たちがこれまで経験した悲嘆トラウマを消し去るわけではない」。従業員のオフィス復帰を支援する時にも、このことを心に刻むべきである。

 ●重要なポイント

【やるべきこと】
・オフィスへの復帰をどう感じているか、必要に応じて無記名の調査を行うことで、懸念に直接対応する。
・対面での仕事やハイブリッドワークへの移行を突然のことだと感じさせないように、多様な働き方を実験する。
・チームメンバーに対しても、自分自身に対しても、思いやりを持ち続ける。

【やってはいけないこと】
・従業員は不安があれば、自分に話してくれるはずだと思い込んではいけない。
・対面での仕事やハイブリッドワークが、会社にとってだけではなく、従業員にとって有益である理由を明確に伝えることを怠ってはいけない。
・守れない約束をしてはいけない。たとえば、在宅勤務でもキャリアには影響しない、あるいは制限なく在宅勤務を続けられると確約してはいけない。


"Help Your Employees Who Are Anxious About Returning to the Office," HBR.org, July 06, 2021.