●実験やパイロットプログラムを検討する

 何が起きるか、どういう状況になるかを想像できないために躊躇する人もいる。オフィスに週5日出社する生活に戻るのは、電灯のスイッチを突然オンにするように、急すぎると感じるかもしれない。

 従業員が圧倒されないように、これまでとは異なる働き方に少しずつ慣れてもらうため、パイロットプログラムを実施したり、個別に実験してもらったりすることを検討する。特に不安のある人は「少しずつ前に進むのがよい」と、ハーシュは言う。

 ここで伝えるべきメッセージは、「まずやってみて、そこから学ぼう」だ。途中でフィードバックを求めることで、何が機能して、何が機能しないかを見極めることが欠かせない。

 このアプローチは、とりわけ不安の強い従業員に個人ベースで適用することもできる。試しに、数週間は週1回出社することを提案し、実際の様子を確認して、やはり問題があるようならば、それを解決する。従業員が最高の仕事をするために、できる限りの便宜を図ることだ。結局のところ、最高の仕事こそが究極の目標であることを肝に銘じよう。

 ●守れない約束はしない

 こうした取り組みを進める中では、出社を躊躇する従業員に対して「オフィスはまったく安全だ」と請け合ったり、心の準備ができていない従業員に「キャリアに影響はしないので大丈夫だ」と保証したくなったりするかもしれない。

 しかし、守れない約束はしないように注意しなければならない。ヒルが指摘するように、「すべての人にとって、出社による健康リスクはゼロだ」と100%の確証を持って言い切ることはできない。

 また、在宅勤務を続けることがキャリアにどのような影響を与えるかについても、現実的になるべきだ。ほとんどのスタッフがオフィスに戻っている時は、特にそうである。会社独自の文化を踏まえて、不利益になる可能性について率直に伝えよう。

「従業員のネットワーキングの機会が減ってしまわないか。彼らの仕事振りを目で見て、確認できなくなるのではないか。こうした懸念は実際にありうることで、そうでないかのように装うべきではありません」と、ヒルは話す。「キャリアに影響が出ないとは、必ずしも保証できないのです」

 同様に、シニアリーダーや人事部門に確認することなく、「特定の便宜を図ることができる」とチームメンバーに約束してはならない。この1年で学んだ通り、状況は常に変化している。現時点では、在宅勤務を選んでも差し支えないかもしれないが、後になって状況が変わる可能性がある。

 重要なスタッフを引き留めようとして、「好きなだけ在宅勤務をしてよい」と請け合いたくなるかもしれない。しかし、実際にはそうできないかもしれない。したがって、チームに対しては、現実的かつ率直な姿勢を貫くことだ