●可能であれば、柔軟に対応する

 もしできるなら、少なくともオフィス再開直後だけでも、いつ、どの程度の頻度で出社するかについて、いくつかの選択肢を従業員に与えよう。

 特にこの1年、それぞれが体験してきたことを踏まえると、「伝えるべきメッセージは、とにかく『柔軟性』の一言に尽きます」と、ダットンは言う。「さまざまな原因が苦痛をもたらしました。パンデミックだけでなく、人種的不正義や政治をめぐる問題もありました。それがどれだけ大きなトラウマになったか、理解したつもりになってはいけません」

 柔軟な対応は、単なる親切心や思いやりではない。生産性の維持と従業員の維持にも関わる。「まさにいま、従業員との心理的契約が脆いものとなっています」と、ダットンは話す。「強引すぎれば、契約が破綻するリスクがあり、エンゲージメントの急降下を招きかねません」

 最近の調査によれば、58%の人が「現在のポジションでリモートワークの継続が許されない場合、必ず新しい仕事を探す」と答えている。パンデミック後に関しては、2000人を超える回答者のうち65%がフルタイムでのリモートワークを望んでおり、33%はハイブリッドワークが好ましいと答えていた。

 上からの命令は、意図とは逆効果になることがある。「無理やりオフィスに連れ戻そうとしても、望んだ通りの結果は得られないでしょう」と、ハーシュは言う。「性急に従来の慣行に戻そうとしてもうまくいかず、むしろ摩擦を引き起こします」

 その結果、心理的安全性が失われてストレスが増えると、生産性が打撃を受け、オフィスに戻るモチベーションの一つでもあるチームの仲間意識にも打撃となる。

 ●理由を説明する

 人は何か不安を感じることをしなければならない時、それには十分な理由があるとわかれば納得できる。会社のシニアリーダーが、なぜオフィス勤務を復帰させることが重要かを明確に説明していないならば、中間管理職であるあなたがそのギャップを埋める必要がある。

「上層部のビジョンは理に適っていると感じられる伝え方をすれば、従業員は一歩を踏み出すかもしれません。もし納得できなければ、強制されているように感じるでしょう」と、ハーシュは言う。

「出社を復活させるバリュープロポジション(価値提案)は何でしょうか。従業員にとって、どのような意味があるのか。同僚との関係を深めることができるのか。明確な境界線を設ければ、ワークライフコンフリクトが緩和されるのか。オフィスに戻るのは損失だと認識される可能性があるため、出社によって何を得られるかという視点からリフレーミングすることが大切です」

 また、場当たり的な決定ではないとチームに理解してもらうことも必要だ。「熟考したうえでの適切な計画だと、従業員が理解することが重要になります」と、ハーシュは言う。

 その計画は、従業員のニーズを考慮したものでなくてはならない。オフィス勤務を復活させることへの期待と、従業員から上がってきた懸念事項を関連づけることだ。たとえば、次のように説明するとよいだろう。

「みなさんの中に懸念を抱いている方がいるのは私たちも理解していますし、それはもっともなことです。そうした懸念に対処するため、会社として○○を行いました」

 繰り返しになるが、何より大事なのは、「耳を傾けてもらえる」「考慮してもらえる」と従業員自身が感じられるようにすることだ。