●従業員がどう感じているか、必要に応じて無記名で情報を集める

 チームメンバーがどう感じているかがわかれば、目下の状況を乗り越え、不安を抱く人を支援するのは、ずっと容易になる。

 ただし、オフィスへの復帰を不安に感じていても、それをあなたに伝えるとは限らないと、『ハーバード流 ボス養成講座』の著者でハーバード・ビジネス・スクール教授のリンダ・ヒルは警告する。「弱いと見られたり、期待に応えられなかったりするのを恐れるからです」

 そのため、安心して話ができる環境を整える必要がある。ヒルは、チームがある程度の規模である場合、無記名のアンケート調査を実施し、復帰について意見を求めることを提案している。

 そのようにして集めた情報を活用し、従業員が抱える懸念に対処する。たとえば、アンケート調査で健康上の問題に言及した人が何人かいた場合、会社が従業員の安全のために講じている予防措置について、正確に知ってもらうのがよいだろう。シニアリーダーに対して、さらなる予防措置を求めることもできる。「これまでの安全対策を、科学的根拠に基づいて、できる限り理解してもらう」ことが大切だと、ヒルは言う。

 あるいは中断されずに集中できるため、在宅勤務のほうが好ましいという人もいるかもしれない。在宅勤務でもオフィス勤務でも、気が散るものを最小限にする方法について、チームと直接話をしよう。

 大切なのは「自分の話を聞いてもらえると感じさせること」だと、ダットンは言う。不安に思っていることを話してほしいと求めたなら、内容にかかわらず、その訴えに直接対応する。そうすればチームメンバーにとっての重要事項や不安に対して、あなたが耳を傾け、真剣に受け止めていることが伝わるはずだ。

 ●復帰について「相反する感情」を許容する

 公の場で、あるいは匿名で不安を打ち明けられた時、相手が複雑で入り混じった感情を抱いていても、それは当然だとして受け止めることが大切だ。

 不安を和らげようと、来るべき変化について何かポジティブなことを言いたいと思うかもしれないが、それではむしろ、従業員は自分の気持ちが無視されたと感じるかもしれないし、ネガティブ感情は表に出してはいけないという意図せぬプレッシャーを従業員に与えるかもしれない。

 ノースカロライナ大学グリーンズボロ校ブライアン・スクール・オブ・ビジネス・アンド・エコノミクス准教授のブリアンナ・カザは、相反する感情(アンビバレンス)の研究と併せて、そうした感情を従業員のレジリエンス(再起力)形成に役立てる方法を研究している。「私たちは誰にでも、ポジティブ感情とネガティブ感情があります。それも、たいてい同時に持ち合わせているのです」と、カザは言う。

 マネジャーは往々にして、こうした従業員の相反する感情に対応し、解決の手助けをしなくてはならないというプレッシャーを感じている。たとえば、悩んでいる人に「明るい面を見るように」と励ましたりする。あるいはネガティブ感情だと気づかず、ただの不満として切り捨ててしまうかもしれない。

 しかし、カザがリーハイ大学カレッジ・オブ・ビジネス准教授のナオミ・ロスマンおよびノースカロライナ大学ケナン・フラグラー・ビジネススクール准教授のシムル・メルワニと行った共同研究によれば、マネジャーが相反する感情を受け入れ、複雑な感情を抱いてよいという態度を示すのが、より建設的な道筋であることが明らかになっている。

「アンビバレンスの模範になれるリーダーは、従業員の適応や方向転換を容易にする組織文化を創出できるのです」と、カザは語った。

 これは、チームメンバーがオフィスへの復帰に不安を抱いている時には、特に当てはまるかもしれない。不安のかけらもなく期待に胸を膨らませている、あるいは完全に意気消沈しているということはないものだ。従業員に対しては、ポジティブ感情もネガティブ感情も表に出すよう促すべきで、感情の問題に対して型通りの解決策を押しつけてはならない。