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新型コロナウイルス感染症のパンデミックという未曾有の危機を乗り越える過程では、組織の常識を打ち破り、圧倒的なスピードとアジリティで問題解決に貢献したヒーローが何人も誕生した。コロナ前の「ノーマル」に戻ることを望む経営幹部も多いが、それでは危機から得られた学びが失われてしまうリスクがある。本稿では、危機下で活躍したヒーローたちの取り組みを無駄にせず、新たな組織文化を構築するうえで役立つ2つの教訓を示す。


 新型コロナウイルス感染症の危機から脱しつつある中、多くの善意ある上級管理職はシステムを元に戻して、事業を再興させようとしている。彼らは、組織がコロナ前の「ノーマル」な状態に戻ることを望んでいる。

 しかし、同じ組織の中には、会社が最もそれを必要としている時に自分の専門知識を進化させ、素早く行動したニューヒーローたちがいる。彼らは複雑で過酷な状況に組織が迅速に適応し、新たなスピードとアジリティ(敏捷性)を発揮する力となった。

 ニューヒーローの多くは、年功や標準的な業務手順に関係なく、官僚主義という障壁を押しのけ、制約を乗り越えて適切な人たちとつながり、リアルタイムで問題を解決した。

 筆者らはこの1年間、35カ国でCEOを務める850人以上を対象に、パンデミックから得られたリーダーシップの教訓を調査してきた。その結果、有力なパターンがいくつか浮かび上がった。

 CEOらは、組織内の人々が危機の困難に立ち向かい、臨機応変に対応し、献身性や創造性を発揮している姿に驚き、刺激を受けている。また、新たに誕生したヒーローたちには、行動を起こそうとする強い傾向や、実際の行動を通じて学んでいく行動学習に対する意欲など、いくつかの共通点がある。

 CEOたちはいま、キャリアを決定づける正念場に直面している。ノーマルな状態に戻ることを望む人と、新たな働き方を維持することを望む人との分裂が進んでいるのだ。

 ベイン・アンド・カンパニーの調査では、従業員の65%が、パンデミックに起因する組織内の切迫感が失われることを懸念している。こうしたヒーローたちは、コロナ危機前のような組織のヒエラルキーの中に戻った時、姿を消してしまう恐れがある。また、新型コロナウイルス感染症の困難を通して築かれたヒーローたちと経営幹部との間の強固な関係が、パンデミックのネガティブな記憶とともに消え去ってしまう危険性もある。

 筆者らは調査を通じて、パンデミック下のヒーローたちのストーリーを何百も耳にした。その多くは2つのカテゴリーに分類することができる。それらは、CEOが組織の最も重要なメンバーの声を支持し、増幅することのできる新たな文化を構築する方法について、2つの重要な教訓を示している。