(1)勇敢なロールモデル

 経営幹部レベルで自身の障害を公表しているロールモデルが存在すると、そうしたモデルが存在しない組織と比べて、障害のある従業員がキャリアをさらに高めたいと思う割合が15%高い。また、経営幹部にロールモデルがいることで、従業員がみずからの障害を公表する割合も26%高いという結果が得られている。

 筆者自身も、障害やジェンダーアイデンティティ、人種といった領域で、みずからのリアルな経験を積極的に共有する経営幹部の近くで働くことで、自分の障害の公表に前向きになることができた。

 そして、実際に障害を公表してみると、社内外から多くの声が寄せられた。おかげで自分も包摂されていると感じるようになった、自分が実力を発揮するために必要なことを職場で言えるようになった、自分の未来について自信が高まったと言ってくる人たちが増えていった。

 その多くは、前述したコミュニティに属する人たちだ。こうした声を聞くことができて、筆者はとても感謝している。自分の経験が他の人たちの助けになることを知り、もっと早く公表しておけばよかったと思うことも少なくない。

(2)インクルージョン実践のための全社研修

 インクルージョンとダイバーシティに対する意識向上を目的とした研修や、障害のある従業員のキャリア促進を支援する研修を行っている組織では、そうでない組織に比べて、障害のある従業員がみずからの障害を公表する割合は35%高い。

 インドのホテルグループ、レモンツリーホテルズはその好例だ。同社は、身体障害、知的/発達障害、あるいは特別な学習障害を持つ従業員を約550人雇用している。その数は、全従業員の10~12%を占める。

 新規採用者は全員、耳聴覚障害のある同僚とコミュニケーションが取れるように、入門レベルの手話講座を受けることが義務づけられている。

 従業員は、障害のある同僚と一緒に仕事をする方法に関しても研修も受ける。たとえば、障害のある従業員にとっては、事前にスケジュールがきちんと決まっていることが、日常生活でも仕事でも物事を上手に進めていくカギとなることが多いため、直前のスケジュール変更は控えなくてはならないといったことが教えられる。

 こうした努力の結果、障害を持つ従業員の間で生産性に目に見える変化が生じたほか、会社全体の士気も向上したという。

(3)クリエイティブになる余地

 インクルージョンと、自分の全人格を仕事に持ち込めること、そして真のアイデンティティを隠すために「仕事用の人格」を演じる必要がないことは、コラボレーションとイノベーションに力を与える。

 筆者らの調査では、イノベーションの自由を与えている先駆的組織では、キャリアをさらに高めたいと思う従業員の割合が26%高いことが示されている。驚くべきことに、そうした組織では、障害のある従業員がみずからの障害を公表する割合が48%も高い。

 日本のソニーが、例として参考になるだろう。同社は、2019年の世界経済フォーラムで発足した「ザ・バリュアブル・ファイブハンドレッド」(V500)メンバーだ。V500は、障害者のインクルージョンを約束したCEOで構成される世界最大のネットワークである。

 ソニーでは、自社プラクティスの潜在的な障壁を評価するために、障害者のインクルージョンに関するフィードバックを募集した。ある障害を持つ従業員は、次のように語っている。

「ソニーは、障害の有無を誰も気にしない職場だという印象を持っています。私が入社した時、同時に約20人が情報システム部門に配属されたのですが、研修期間中は誰もが自然に協力し合い、私が助けを必要としている時には、当たり前のようにサポートしてくれました。(中略)また、障害を考慮に入れた設備の構築に力を入れていることにも、感銘を受けました」