●子育てを支援する

 コロナ禍を機に、子育てをしながら働いている人たち、とりわけシングルペアレントたちが昔からずっと知っていた現実が改めて浮き彫りになった。それは、子どもの世話は否応なく行わなくてはならない、ということだ。

 必要とする人が誰でも良質な託児サービスを利用できるようにするための公共投資に対して、超党派の支持が広がりつつある。そうしたサービスは、ほかの先進国では当たり前のものだ。米国のジョー・バイデン政権も、有給家族休暇への大々的な投資を提案し、託児サービスを重要な社会インフラと位置づけている。

 しかし、政界だけでなく、ビジネス界が果たすべき役割も大きい。企業は育児を支援するための方針や慣行を整備しなくてはならない。

 ビジネス界の課題は大きい。2020年9月、米国人材マネジメント協会(SHRM)が全米の平均像を描き出せるようにサンプルを選んで行った調査によると、87%の人は託児サービスや教育サービスの費用を会社が負担すればとても助かると述べている。しかし、実際にそのような制度を設けている企業は8%に留まっている。職場での託児サービスの提供や、社外の託児サービスとの提携に関しても、状況は同様だ。

「この調査結果から見て取れるのは、大半の働き手が有益だと感じるようなサービスの多くが、企業でほとんど提供されていないということです」と、SHRMの広報担当であるジュリー・ハーシュホーンはメールによる取材で述べた。企業は従業員が抱えるケア関連のニーズを理解し、もっと支援を強化することを約束すべきである。

 ●育児をしながら働く親を支援する政策を後押しする

 企業は、政策の変更を実現するための取り組みを支援することもできる。シングルペアレントならではの問題を意識した政策を導入するよう働き掛けるのだ。

 自身もシングルペアレントである民主党下院議員のケイティ・ポーターは、それを議会における自分の使命と考えている。税制やその他の公的制度でシングルペアレントが不利に扱われる「シングルペアレント・ペナルティ」を撤廃させようというのだ。

 たとえば、コロナ禍のオーストラリアにおけるシングルマザーに関する研究によると、シングルマザーはパートナーがいる母親よりも不安とストレスが小さかったという。

 それはもしかすると、「政府の支援により、コロナ禍の下でも託児サービスと学校が継続されたり、(シングルマザーに対する)直接の援助が提供されたりしたからかもしれません」と、ジェンダーによる時間使用パターンの違いを研究するメリーランド大学の社会学者リアナ・セイヤーは述べている。「これは企業にできることではありません。それでも支援することはできるはずです」

 米国では家族病気休暇法により、年間12週間の無給のケア休暇を取得できる。これは、シングルペアレントに向けた特別な支援ではない。一方、ほかの国々は、シングルペアレントの苦境を理解し、その問題を和らげるための制度を導入している。

 ノルウェーでは、パートナーがいる親は、12歳未満の病気の子どもの世話をするための有給休暇が年間10~15日取得できる。シングルペアレントの場合、この日数は20~30日だ。

 フィンランドの新しい有給家族休暇制度では、両親それぞれに164日、シングルペアレントには328日の休暇取得を認めている。ドイツはコロナ禍の中で、子どものケアのために、パートナーがいる親には有給休暇の10日上乗せ、シングルペアレントには20日上乗せを認めている。

 ベルギーや韓国などは、シングルペアレントへの給付をパートナーがいる親よりも充実させている。しばしばひとりで育児の責任を担うシングルペアレントの大変さを理解しているからだ。

 世界のさまざまな国々で、シングルペアレントにどのような支援が提供されているかを調べれば、自国の政治にどのような政策の導入を要求し、後押しすべきかが見えてくるだろう。

 前出のシングルペアレントでラジオ司会者でもあるタンジナ・ベガは、こう述べている。「会社が従業員の力になろうとすればするほど、従業員も会社の力になろうとするものです」。この点は、シングルペアレントの場合はなおさら言えることだ。


"How Companies Can Support Single Parents," HBR.org, June 28, 2021.