アラカルト・オプションの運用方法

 自社や航空連合(エアライン・アライアンス)の提携会社の運営ではないラウンジを例に考えてみよう。ビジネスクラスの航空券は一般に、ラウンジ利用のオプションが付いている。無料の場合、利用しないより利用したほうがほんの少しでも得だと思えば、利用する可能性が高い。

 自社や提携会社が所有するラウンジなら、乗客が利用する限界費用は小さいため問題ない。ただし、自社のラウンジではない場合、1回の利用につき約25ドルを航空会社が請求される。この料金を顧客に転嫁することは考えられない。上級クラスのチケット料金には、こうした特典が含まれているからだ。

 そこで、アラカルト・オプションならこんなふうに提案できる。「このチケットはラウンジをご利用いただけます。利用しない場合は250マイルを加算させていただきます」。ラウンジの利用が1回25ドルとすると、このオプションでラウンジを利用しないことを選択した乗客1人あたり、航空会社は22.50~24.75ドルの利益を得る。

 さらに、ラウンジに価値を見出している人は無料で利用できるから、すべての乗客の感情を損ねることはない。つまり、ウィン・ウィンの方法で無駄をなくすことができるのだ。22.50ドル以上の利益と、このオプションを利用するビジネスクラスの乗客数をある程度、適正に見積もることにより、年間数百万ドルの節約になる(このオプションを追加するためのコストを除く)。

 アラカルト・オプションがコスト削減につながりうるもう1つの例は、早めのチェックインを促すことだ。長距離国際線は多くの乗客が出発空港でチェックインするため、航空会社はピーク時に多くの係員をカウンターに配置しなければならない。国内線以外のフライトは出発の3時間前にカウンターへ行くよう航空会社は呼びかけているが、大半の乗客は1~2時間前にならないとチェックインせず、係員は暇を持て余して雑談している。

 出発時刻の間際にチェックインした乗客にペナルティを課すことはできないが、たとえば2~3時間前にカウンターに行くと100マイルを加算するといったアラカルト・オプションを提供することは可能だ。そして、この場合も、航空会社にとってマイルを提供するコストはごくわずかだ。

 一方で、早めにチェックインをする人が増えると、係員の忙しさが安定して、国際便の出発に合わせて人員を増やす必要がなくなる。これにより、推定で年間数百万ドルの節約になるだろう。

 ホテルチェーンには同様の戦略として、部屋の清掃が不要ならポイントを付与するというオプションがある。航空業界は顧客の価値と供給側のコストが非対称なため、アラカルト・オプションのメリットは他の業界より大きい。顧客にとってのマイルの価値は、航空会社にとっての限界費用よりはるかに高いのだ。

 さらに、マイルは航空会社にとって非常に安価なため、アラカルト・オプションの導入前に「マイルの弾力性」に関する大規模なデータ分析は必要ない。100マイルの提示で顧客の行動に大きな変化がなければ、インセンティブを250マイルに引き上げて結果を待てばいい。

 このようにアラカルト・オプションの仕組みは、コスト削減と、顧客ロイヤルティおよび収益の向上の双方を実現できる可能性が高い。どの乗客にも不利益をもたらすことはなく、オプションを行使した乗客は、自分で選択したことにより利益を受けて、今後も同じ航空会社を選択する可能性も高くなる。

 たしかに、燃料価格の変更のような規模で収益に直結する効果はないだろう。ただし、燃料価格は航空会社にはコントロールできない。

 付加サービスに料金を支払うアラカルト「プライシング」の仕組みの限界を考えれば、今回挙げた2つの例のほかにも、それぞれの航空会社が独創的なアラカルト「オプション」を考案することが効果をもたらすだろう。高額なサービスを廃止するのではなく、過剰な利用をなくすことが、減少する利益に対処する1つの手段となる。


"How Airlines Can Cut Costs - Without Annoying Customers," HBR.org, June 14, 2021.