●相手の性格や人間性に疑問符をつけない

 誰かが行ったことについて、「プロフェッショナルらしくない」「間違っている」「倫理にもとる」と思うことがあるかもしれない。だが、こうした言葉を使うと、相手に守りに入る隙を与えてしまう。

 人間には、自分自身を礼儀にかなった道徳的な人間だと見なそうとする強い欲求がある。相手の問題行動を、その人物の中核的な自己意識を脅かすような形で指摘すれば、相手は目の前の課題ではなく、自分自身を守ることに意識を移す可能性が高い。

 そうではなく、何かが望ましくない、あるいは最善ではない可能性を問うか、それらを伝える表現で会話を始める。たとえば、締め切りを守れなかった相手を「プロフェッショナルらしくない」と決めつけるのではなく、「私たちのミッションを損なう可能性がある」と指摘する。

 ほかにも、数字を操作して自部門の業績を高く見せるようとする行動に対して「間違っている」「倫理にもとる」と言うのではなく、「私たちのコアバリューと一致しない」「信頼を傷つけ、学習志向を損なう可能性が高い」といった表現ができるだろう。

 ●「個人的な問題ではない」と言わない

 筆者の経験では、「個人的な問題ではない」「個人的に受け止めないでほしい」と言うのは、実のところ、それが相手にとっては個人的な問題であることを無意識のうちに理解している時だ。

 映画『ユー・ガット・メール』に格好の例がある。大手書店チェーンの経営者(トム・ハンクス)が小さな絵本の店のオーナー(メグ・ライアン)に対して、大型書店が近所に進出することで、何世代も続いてきた彼女の店が廃業に追い込まれても、個人的な問題ではないと言うシーンがある。だがそれは、彼女にとっては極めて個人的な問題だった。当然のことながら、彼女は彼の言葉を聞いて、ますます怒ってしまう。

 あなたの発言や行動によって傷ついたり、怒ったり、明らかにショックを受けたりしている相手に向かって、あなた個人を傷つけるつもりはないと言うのは、侮辱に侮蔑を重ねるだけだ。

 本当に相手のことを思うならば、それが相手にとって個人的な問題であることを素直に認めてはどうか。たとえ、あなた自身にとっては個人的な問題でなくても、だ。それができないのならば、「あなた個人」という言葉をいっさい口にしてはいけない。

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 最後にもう一つ、「些細なことに労力をかけてはいけない」という表現について、お伝えしたい。残念ながら、これは難しい会話という領域では、最高の助言にはならない。重要部分の説得、データとソリューション、設定とタイミングといった多くを上手に成し遂げたとしても、本稿で取り上げてきたような一見些細なコミュニケーションのミスによって、目的達成が妨げられることがあるのだ。

 幸いなことに、些細な部分について適切に対処することは、すぐにでもできる。必要なのは、問題のある言葉や表現に気づき、それらを用いることを最小限に抑える決意だ。


"Words and Phrases to Avoid in a Difficult Conversation," HBR.org, June 21, 2021.