Illustration by Aron Vellekoop León

困難な交渉や話し合いに臨むにあたり、極度の不安やストレスから、思わず言うべきでないことを口走ってしまった経験はないだろうか。それでは、どれだけ完璧なデータとソリューションを携えていても、望んだ結果は得られない。説得して合意を得るはずが、本来の目的達成から遠ざかるのには原因がある。相手の感情反応を考慮せずに、言いたいことを言ってしまうからだ。本稿では、相手を傷つけたり、怒りを買ったりしてトラブルにつながる言葉や表現を取り上げ、それらを回避する方法を紹介する。


 難しい会話が難しいのには理由がある。特に不安な時やストレスで疲弊している時は、言うべきでないことを口走ってしまいやすい。そうなれば、どれだけ準備をしていても台無しだ。相手を不快にしたり、怒らせたりしたら、最高のプランも無駄になってしまう。

 筆者は20年にわたって教鞭を取り、研究を行う中で、極めて重要なポイントを多くの人が忘れがちであることを明らかにした(詳細は新著Choosing Courageにまとめている)。すなわち、難しい会話を乗り切るためには、相手の気持ちや意見に留意して、自分のメッセージを形づくる必要があることだ。

 これまで筆者が見てきた中で、最もありがちな間違い、つまり私たちのボキャブラリーに忍び込んでいる言葉や表現の一部を紹介し、それらがトラブルにつながる理由を説明しよう。

 ●自分の見解が当然だと思い込まない

 自分が100%正しいと思っている場合、「明らかに」「当然ですが」あるいは「疑問の余地はない」といった言葉を使ってしまうことがある。その場合、あなたは素朴実在論の罠に陥る。すなわち、自分は誰でも簡単に理解し、同意できる客観的現実に通じているという思い込みだ。

 物事の白黒が客観的に明らかな状況というのは、めったにない。そして理性的な人は、あなたとは異なる見解を持つかもしれないし、あなたと同じ見解を持つためには、さらなる説得が必要になる場合もあるかもしれない。

 当然のことながら、何気なくだとしても、自分とは異なる見解は愚かである、あるいは取るに足らないことを示唆する表現を使えば、相手は強要されている、または侮辱されたと感じるだろう。

 自分の見解について説得力を持って説明できれば、その見解が当たり前で疑問の余地はないという表現を使って、相手の同意を得るための努力が空しく終わることはないはずだ。

 ●誇張しない

 これまで何度も腹の立つ思いをさせられてきた人物が相手の場合、「あなたはいつも……」「あなたは絶対に……」という表現が、口をついて出てしまうかもしれない。

 そうした誇張表現は、あなたの信頼性全般を傷つけるとともに、その議論が内容ではなく、頻度に関するものに変わってしまう。相手は「いつも、ということはないでしょう」と反論し、あなたの主張が間違っていることを示す具体的な日付や機会を指摘するプロセスに進む可能性が高い。

 もしあなたの狙いが、誰かに何かを始めさせる、もしくはやめさせることならば、そこに焦点を絞り続けなくてはならない。