(2)意思決定の代わりに原則を使う

 この1年間は、コロナ禍で無数の意思決定を下す必要があった。子どもたちを学校に行かせるべきか。両親に会いに行っても大丈夫か。オフィス勤務に戻っても安全か。

 のちに重大な影響を及ぼしかねないにもかかわらず、手元には不完全な情報しかない状態で意思決定を迫られ続けると、認知的過負荷と専門家が呼ぶ状態に陥る可能性がある。つまり、やらなければならない頭脳労働に対する需要が、処理能力を超えるのだ。

 この状態に陥ると、ミスを犯す割合と、打ちのめされたような気持ちになる割合がどちらも高くなる。しかし、意思決定を絶対的な原則に置き換えることで、認知的過負荷を減らすことができる。

 たとえば、減量管理学では、「夜7時以降は食べない」と決めるほうが「夜7時以降はスナックを食べる量を制限する」と決めるよりも、はるかに効率的だという。後者は、その後に意思決定すべきことを数限りなく生み出すからである。「このカップ入りヨーグルトを食べてもいいだろうか。フルーツ一切れだったらどうか」という具合だ。夜7時以降に食べることを禁ずる絶対的な原則を使えば、それだけで済む。判断すべきことは何もない。

 有名な著者でポッドキャスターでもあるティム・フェリスは、これを「100の意思決定をなくすための1つの意思決定の発見」と呼ぶ。フェリスにとって、それは「2020年は新刊書を読まない」という原則を定めることだった。

 1週間に何十冊もの新刊書や近刊書を読み、レビューや推薦文を書いてほしいと熱意ある著者やそのPR担当者から洪水のように要望が押し寄せる日々を何年も経験した後、彼はこの包括的な原則を決めた。これにより、それぞれの書籍について膨大な数の意思決定をしなくてはならない生活から、自由になれたのだ。

 スティ―ブ・ジョブズが毎朝、その日に着るものを選ぶ際の決断疲れをなくすために、毎日同じパターンの服を着ると決めたのは有名である。

 エグゼクティブサーチファームのハイドリック&ストラグルズで、カナダを拠点にオペレーション担当マネージングパートナーを務めるジョン・マッキーは、「金曜日には会議を行わない」という原則を定めている。出席すべき会議をそれぞれ取捨選択し、ディープワークに専念する時間を確保しようとしたものの、それが失敗に終わったため、週1日、自分が集中できる日を設定した。