実際の組織では
地位の低い従業員に対する
トレーニングが効果的

 筆者らの研究結果は興味深いものだが、いずれも参加者に架空の組織で行われた会議のシナリオを読んでもらった実験に基づいている。

 すべての従業員の意見に耳が傾けられてはいない、実際の組織ではどうだろうか。筆者らは、地位の低い従業員にアンプリフィケーションのトレーニングを行い、彼らの影響力を高めることができるかどうかを検証したいと考えた。

 筆者らの研究チームは、ある非営利組織と協力した。その組織の責任者は、従業員のモラール(意欲)が低く、チーム内に意見を聞いてもらえない従業員がいると感じていた。

 そこで影響力が不足していると責任者が判断した従業員22人に対し、アンプリフィケーションの方法を説明する17分間のトレーニングを実施し、実際に試すよう勧めた(それ以外の従業員75人には介入の事実を伝えなかった)。

 そして、2週間かけて従業員同士でアンプリフィケーションを実施してもらい、介入する前と後で組織の全員を対象に、同僚と組織全体に関するアンケートに回答してもらった。

 その結果、シナリオを使用した研究で観察されたことが、実際の組織でも起こりうることが確認された。アンプリフィケーションの訓練を受けたグループの従業員は2週間後、同僚から以前よりも地位を高く評価された一方、訓練を受けなかった従業員は評価が変わらなかった。

 この研究では、同僚に対するアンプリフィケーションを学ぶことが、すべての従業員の意見に耳が傾けられるようになるシンプルで実用的な方法であることが、実際の組織で確認されたのである。

さらなる調査に期待できる分野

 筆者らの研究は、アンプリフィケーションについて、さらに興味深い問題を提起している。重要なテーマの1つは、アンプリフィケーションが、グループ全体にどのような影響を与えるかということだ。

 ビルがローラに対してアンプリフィケーションを行った場合、2人の地位は向上する可能性があり、その場にいる他の従業員や組織全体にも別のメリットがあると考えられる。おそらく、ある同僚から別の同僚に対するアンプリフィケーションを目撃することで、組織が心理的に安全で、参加を歓迎されている環境であることが従業員に伝わるのだろう。

 この考えを裏付けるように、今回の研究のサンプルである非営利組織では、従業員がアンプリフィケーションを実施した後、チームを以前よりも好意的に評価し、介入に参加していない従業員の間でも同様の結果が得られた。なぜこのようなことが起こるのか、一般的にアンプリフィケーションがグループ全体にどのような影響を与えるのかを明らかにするには、さらなる研究が必要だ。

 2つ目の疑問は、関係者が異なる人間関係や経験を持つ場合に、アンプリフィケーションがどのように作用するかということだ。

 競争や敵対した経験を持つグループ間でアンプリフィケーションが行われた場合、それが結束を生む強力な方法になるのではないかと、筆者らは考えている。しかし、あるサブグループ内でのアンプリフィケーションが、そのグループと対立するサブグループから競争的だと見なされるなど、アンプリフィケーションが裏目に出る可能性もある。

 これまでのところ筆者らの研究結果は、マネジャーと従業員の双方にとって、アンプリフィケーションが強力なツールになることを示唆している。一部の部下の意見には適切に耳を傾けられていないと感じているマネジャーは、彼らを教育して互いにアンプリフィケーションを実行させることで、地位を高めることができるだろう。

 利己的だと見られることなく、自分の影響力を高めるにはどうすればいいかと悩んでいる従業員には、アンプリフィケーションを勧めたい。それを通じて、意見が見過ごされている可能性があるチームメイトの存在を組織が認識する助けになるだけでなく、自分自身も恩恵を受けることができる。


"Research: Amplifying Your Colleagues' Voices Benefits Everyone," HBR.org, June 17, 2021.