どう対処すべきか

 あらゆる複雑な判断と同じように、異なる要素を調整しようとすると、道を見失いがちになる。議論を明確かつ比較可能にし、個別の動機による影響を最小限に抑えることは、単独で行うのも難しいが、集団においてはさらに難しい。

 筆者は、企業がこれを集団における問題解決のタスクと見なし、交渉や意思決定に関する科学的研究から解決の糸口を得ることが有益であることを明らかにしている。

 これらの研究は長年にわたり、複数の利害関係者の優先傾向や保有情報が共有されていないだけでなく、時として隠されている場合が多い状況に対処する最適な方法を見出そうとしてきた。そのような科学的研究に基づいて、リーダーが取るべき3つのステップを以下に紹介する。

 ステップ1:違いを明らかにし、それぞれの立場の価値観を認識する

 意思決定者は、3つの会話が存在するということだけでなく、それぞれがハイブリッドワークに関する方程式の重要な要素であることも認識しなければならない。主要な利害関係者が、それぞれ重視している目的とそれらの関連性は、次の方法で特定できる。

(1)データを収集する:それぞれの利害関係者に簡単な調査を実施して、ハイブリッドワークや在宅勤務に関するポリシーを定める際の最優先事項と目的について尋ねる。意思決定に関する研究から、個別かつ匿名で意見を収集することは、立場を最も正確かつ包括的に理解する方法であることが明確に示されている。

 すべての回答をまとめてリストにする。その際、回答率に注意しなければならない。たとえば、一部の熱心な従業員しか回答していないというように、全従業員を代表する回答が得られていない場合には、データに価値はなく、誤解が生じる可能性さえある。

(2)視覚化する:次に、意思決定者に全体像を把握させることが欠かせない。そのカギとなるのが視覚化だ。それぞれの利害関係者に、回答リストに挙げられた各基準の重要度を評価してもらうことから始める。

 たとえば、項目ごとに区分けしたボードに、数字を振った付箋を貼って、それぞれの優先度を示してもらう。あるいは筆者のように投票アプリを利用すれば、意思決定者は携帯電話で各要素を評価し、アプリがそれぞれの評価の分布を表示してくれる。

 これを同時期に行えない場合には、第2の調査として別途実施することも可能だが、視覚化は集団で行うほうが効果も利益もはるかに大きい。

(3)対立意見に焦点を当て、集団のデータを読み解く:生成したデータに基づいて、データから読み取れる集団としての優先順位をグループで話し合う。

 たとえば、ある利害関係者は優秀な人材を引き付ける手段として従業員自身の選択を優先し、別の利害関係者はイノベーションを推進するランダムな交流の必要性を重視し、3人目の利害関係者は組織文化を維持するには対面の時間が重要だと主張していることが見えてくるかもしれない。

 それぞれの立場の優先事項が明らかになると、次に、それらの間のトレードオフをどのように交渉するかが問題となる。多数決によって最良の決定がなされるケースはめったにないことを覚えておきたい。

 データについて議論するうちに自然に決着が着くこともあるが、問題がもっと複雑に絡み合っている場合もある。そのうえ意思決定プロセスにはバイアスが生じやすいため、躊躇せずに、より構造的なアプローチを取らなくてはならない。

 意思決定支援ツールも数多くある。ちなみに筆者がよく使うのは、マトリックス・オブ・チェンジというツールだ。利害関係者の共感を得られるアプローチを取ることが最重要であり、最も馴染みのある方法を利用するのがよいだろう。

 このステップでの目的は、適切なハイブリッドワークについて何らかのソリューションに合意することではなく、「自分たちが何を重視していると、データが示しているか」について合意することである。