循環を可能にする経済要因

 互いに大きく異なるようにも見える上記の諸事例では、循環性が実現している。にもかかわらず、もっと広く一般的に実現するのが極めて難しいのはなぜだろうか。

 その答えは、これら3つの事例の組織はすべて、リサイクルを通じて価値を十分に引き出して共有できているため、サプライチェーンの各参加者は恩恵を享受し、参加を選択しているからだ。加えて、私たちの経済において、これを非常に実現困難にさせている構造的な理由がある。

 その理由を理解するには、工場での生産と、生体細胞内の生産とを比較してみるとわかりやすい。細胞は、比喩だけでなく実際の機能面でも、非常に生産的な製造システムである。

 たとえば、細胞は需要に厳密に対応するリーンな生産フローシステムを持っている。在庫は極端に少なく、細胞内でのスループット時間と正味処理時間の割合は約2対1で、最新のリーン生産の工場を上回る。そして検査・品質管理は100%(全量)で行い、欠陥部品は即座に破棄(および分解)される。

 さらに、細胞はほぼ完ぺきな循環型サプライシステムを持つ。これを可能にしているのは2つのシステム特性だ。

・部品の共通性と容易な分解

 細胞の複雑な構造を成立させているのは、わずか30の基礎的物質(水、硝酸塩、二酸化炭素、メタン、炭素、酸素、リン酸塩など)と、それより少し多い媒介物質(アミノ酸、糖、でんぷん、脂肪酸など)だ。もっと複雑な最終生成物は、容易に分解されて基礎的物質へと戻ることができる。これを、1000以上もの異なるサプライヤーから材料を調達する中規模の製造工場と比べてみよう。

・現地生産の度合いが高い

 細胞生産における材料と産出物のほとんどは、現地で調達され使用される。ほかの場所で用意され(川や大気などを通じて)持ち込まれるものは非常に少ない。これを、現代のサプライチェーンと比べてみよう。たとえば自動車の生産では、複雑化が進む部分組立品は、国境を超える運搬の往復が最大7回も行われる。

 細胞(および細胞でつくられた生命体)の周囲では、基本的物質はわずか30種の循環を通じて現地で再利用され、ここでは実際にすべての参加者が何かを得る。植物、草食動物、肉食動物、死んだ動植物を消化する微生物、生体物質の処理をさらに進める細菌までが恩恵を得るわけだ。そのおかげで植物は、ふたたび水や土から根を通じて原料を取り込むことができる。これらのプロセスはすべて、太陽からのエネルギーが光合成を通じて取り込まれることで促進される。

 これら2つの特性によって、再利用のコストが減り、有用性が高まる。材料を現地で入手でき、ほかの場所にある材料よりも安価で迅速に獲得できるからだ。

 前述の循環型サプライチェーンの事例を振り返ると、扱われる製品はこれらの特性を特徴としているといってよい。アルミニウムは標準的な素材であり、1つの工場で扱える(かなりローカルな)範囲内でリサイクルができる。だからこそアルミニウムは、リサイクルが広く導入された初の成功例となった。

 家具はかつて、非標準的なカスタム部品によって全体がつくられていたため、リサイクルされなかった。ライプの画期的なアイデアは、部分的な再利用と再製造という方法を見出したことだ。それによってリサイクルを始めることはできたが、もっと広く展開するにはより標準的な部品の開発が必要であり、それが実現すればローカルなリサイクル市場の成立につながる。

 最後に、衣服のリサイクル成功が制服から始まったのは意外ではない。ファッション衣服よりも標準化されているからだ。しかし、(広域から集めるのではなく)ローカルなリサイクルの量を増やすには、デザインのさらなる標準化が必要だ。

 問題は、サプライチェーンの大半は、基本構造がはるかに複雑な製品を扱い、地理的に膨大に広がっていることだ。そして、経済的にも大きな理由がある。