『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』(DHBR)では毎月、さまざまな特集を実施しています。本稿では、最新号の特集「マーケティングにAIを実装する」への理解をさらに深めていただけるよう、関連する過去の論文をご紹介します。

 DHBR2021年9月号の特集は「マーケティングにAIを実装する」。人工知能(AI)をマーケティングに活用することで多大な恩恵を享受している企業がある一方で、局地的な活用に留まったり、機能不全に陥ったりしている企業も少なくない。AIの力を最大限に引き出し、現場で活用するために何をすべきか。

 バブソン大学特別教授のトーマス H. ダベンポート氏らは、最高マーケティング責任者(CMO)などの担当者によるAI戦略の立案が急務だと主張する。そして戦略を立てるためには、採用しようとしているAIが、どのような性質を持つものか正しく把握することが必要だ。

 ダベンポート氏らは「マーケターはAI戦略をいかにデザインすべきか」を通じて、マーケティング用のAIを分類することが可能になるフレームワークを提示する。これにより、企業をAI活用の入り口へと導く。

 ビジネスでの意思決定の精度を高めるため、AIに投資する企業が増えている。しかし、その投資は必ずしも事業利益に結実してはいない。ハーバード・ビジネス・スクール准教授のエバ・アスカルザ氏らは、AIをマーケティングに活用しようとするマネジャーが犯しやすい過ちを特定し、予防策を開発した。「AIへの投資を利益につなげる方法」では、そのエッセンスを、事例とともに明らかにする。

 マーケティングテクノロジー、通称「マーテック」は広く普及し、欠かせないものとなった。顧客情報を収集、保存、統合してアルゴリズムで解析するマーテックは、マーケターの業務効率を大幅に高め、すでに広告、コンテンツマーケティング、営業管理、商取引に革命をもたらしている。しかし、その一方で、マーテックを導入したにもかかわらず、活用されずに、機能不全に陥っている企業も多く存在する。

 デューク大学フュークアスクール・オブ・ビジネス教授のカール F. メラ氏らによる「流行りのマーケティングテクノロジーに飛び付くな」では、まずデータのため込みとシャイニー・ニュー・オブジェクト症候群という2つの落とし穴を説明する。そのうえで、「マーケティングテクノロジー・スタック」(データとベンダーソリューションの組み合わせ)を機能させるための戦略的アプローチを提示する。

 投資や融資の判断、自動運転、医療診断、あるいは採用活動にも、機械学習ベースの人工知能を組み込んだプロダクトがますます活用されている。だが、新たな情報から学習して自律的に判断するアルゴリズムが、常に倫理的で正確な判断をするとは限らない。

 大きな事故による損失や、バイアスのかかった判断が生じるリスクを、企業はいかに回避し、軽減することができるか。INSEAD助教授のボリス・バビッチ氏らによる「機械学習による損失を避ける5つのポイント」では、機械学習が抱えるリスクについて論じたうえで、医療法や倫理、規制といった各側面から、リスク管理に役立つ重要なコンセプトを提示する。

 およそ半数のAI事業が研究段階で頓挫するといわれる中、小売・流通業界ではAIの実用化に向けた動きが広がっている。これを推進する存在が、メーカーや卸、小売りなど業種を超えた約250社が参画し、AIを使った実証実験などを行うリテールAI研究会だ。

 Retail AI代表取締役CEOの永田洋幸氏とリテールAI研究会テクノロジーアドバイザーの今村修一郎氏による「AIを小売・流通の現場に実装する方法」では、大手ディスカウントストア・トライアルグループの経営者として、またP&Gジャパンのデータサイエンティストとして実店舗でのAI活用を牽引してきた筆者らが、実用化がなかなか進まない原因を解説したうえで、実店舗でのAI活用事例や企業による実証実験の結果を紹介。さらに、AIを用いてイノベーションを起こせる組織へと変わるために欠かせない3つの考え方を述べる。

 ビジネスの主戦場がデジタルの世界に移行する中、企業のマーケティングは、マーケター個人の想像力に頼る方法を脱却し、データで可視化された顧客の需要を的確に満たす方法へと進化を遂げている。

 楽天グループでチーフ・データ・オフィサーを務める北川拓也氏は「データとAIの力でウェルビーイングな社会を実現する」の中で、自社の事業を通じて多様なニーズに応えていくことは、金銭的な利益を得られるだけでなく、人々の消費に対する価値観を変え、ウェルビーイングな社会の実現に貢献できる可能性があると語る。