4. 世代間の富の移動

世代間でどのように富が移動しているか。

 世代のパワーと市場に及ぼす影響力を比較したい場合は、次の問いによく注意を払うべきだ。それは、なぜ中国では若い世代が市場を動かしているのかという問いである。

 中国の若い世代は、米国の同世代に比べてたくさん金を持っているわけではないし、高給の職に就いているわけでもない。中国では米国よりも、年長世代から若い世代に富が移動しやすいのである。

 米国の場合、ベビーブーム世代がいまも市場を動かしているのは、この世代が富を握り続けているからだ。今日の米国の親世代は、昔に比べれば子どもたちを経済的に支援するようになったが、中国やほかのアジア諸国に比べると、経済的支援の規模ははるかに小さい。

 中国の40歳未満人口(7億人あまり)を国の総人口(15億人近く)と比較すれば、その割合が比較的小さいことは明らかだ。中国人の年齢の中央値は38歳。アジアのもう一つの人口大国であるインド(中央値は27歳を下回る)に比べれば、中国は若い国とは言えない。それを反映して、中国社会の人口構成は、逆ピラミッド型になっている。

 1950年代と60年代に猛烈なベビーブームを経験したのち、1979年以降は「一人っ子政策」が導入されて、出生数が大きく落ち込んだ。その結果として、中国はいわゆる「4-2-1危機」に見舞われている。祖父母4人に対して、親が2人、そして子どもが1人という人口構成になっているのだ。

 こうした逆ピラミッド型の社会においては、上の世代から下の世代へ金が流れやすい。米国の同世代に比べてごくわずかな所得しかない中国の若者たちが、市場で極めて大きな影響力を持っているのはそのためだ。親世代と祖父母世代という2世代にわたる家族の金と愛情と関心と夢――そして途方もないプレッシャー――が1人の子どもに注がれているのである。

***

 筆者がともに仕事をしてきた人の多くは、本稿で紹介したフレームワークを有益だと言ってくれている。このフレームワークにデータを投入すれば、1つの国の中で異なる世代を比較したり、異なる国の間で同世代を比較したりすることができる。

 マーケティングプランの策定が目的にせよ、投資上の決定が目的にせよ、あるいはそれ以外のことが目的にせよ、このフレームワークを活用すれば、世代に関するステレオタイプを克服できる。そのようなステレオタイプはすでに崩壊しつつあるにもかかわらず、その固定観念を画一的に全世界に当てはめようとして失敗するケースがあまりに多い。


"Understanding China's Young Consumers," HBR.org, June 11, 2021.