政策担当者への教訓と影響

 政府の支払い政策が、現在の病院の財務モデル構築を後押ししたと考えられるが、政府の適切な措置は、それを改革するうえでも意味のある役割を果たすことができる。

 競争を促進する政策を実行すれば、病院や医療保険会社が患者のニーズに対応する緊急性を確実に高めるだろう。従来の出来高払い方式からの支払い改革もまた、病院に現在の財務モデルからの転換を余儀なくさせるだろう。

 政策担当者は、医療提供者が需要の急増を予測し、それに備えて対応できるように、病院セクターにおける情報交換を促進する政策を実行すべきである。地域の集中治療室(ICU)の収容能力や重要な医療資源に関する国内の稼働状況を、病院に知らせる取り組みを国主導で実施すべきだ。

 情報のインフラ整備によって、病院は受け入れ状況を共有したり、逼迫状況を他の病院に知らせたりできるようになる。米国財務会計基準審議会(FASB)が病院に対し、そうした情報を財務諸表で開示することを義務づければ、非営利であれ上場営利であれ、ファイナンシャルアナリストが財務評価に緊急対応能力を含めることになるだろう。 

 政策担当者はまた、医療保険会社に義務づけている最低限の健康保険給付にコンティンジェンシープランを含めるべきである。次なるパンデミックへの準備は、この1年間に学んだ苦い教訓だけでなく、可能性のある他の需要の急増に備えて計画されるべきだ。私たちは、地震や労働災害、異常気象、新たな感染症や他の不幸な災害が将来起こりうることを知っている。それらを見越した医療制度を準備する必要がある。

 計画は、治療が必要になった時ではなく、医療保険に加入する時から始まるべきだ。SECが要求する財務情報の開示にコンティンジェンシープランが含まれれば、病院の財政状態を分析するアナリストが不適切な計画を指摘するだろう。

 医療保険給付の対象化や財務諸表での情報開示の義務化によって、危機対応の強化が、備蓄の取り組みでよく見られるような「緊急事態が過ぎれば、忘れ去られる対策」ではなく、現実のものであることが保証される。

 いざ危機という時に大きな影響力を持ち、意味のある改革の種を蒔くことができる創造的政策は、ほかにもある。

 たとえば、医療保険を通じて、医療コストを提供者に償還する公的および私的支払者である政府および民間組織は、パンデミックの間、バーチャル医療に関わる保障や償還の制限を緩和し、その結果として、遠隔医療の訪問数が爆発的に増加した。政府の支援があれば、この状況は継続し、医療制度の構造改革を引き起こす力になるだろう。

 バーチャル医療ということは、一元化された高価な施設の必要性が減ることを意味し、また立地も重要ではなくなるため、医療提供者間の競争を促進することにもつながる。

 政策担当者は、資格制限を緩和することもできる。そうすれば、医療提供者は柔軟に、医療チームを必要な場所に向かわせることができる。医師や看護師は認可された地域の外で働くことができ、患者はバーチャル技術を介したサービスや在宅ケア、あるいは病院以外の環境での集中治療を受けられるようになる。

 医療政策に携わる担当者は、現在の緊急事態に対応しながらであっても、今後のよりよいシステムへの移行に向けて、長期的な視野を持ち続けることが必要だ。国民全体に行き渡る対応能力を生み出し、需要拡大時に逼迫した病院の財務モデルの改革に重点的に取り組むべきである。

ミネソタ大学新型コロナウイルス感染症入院追跡プロジェクトについて詳細な考察をいただいた、同校カールソン経営大学院教授のピナー・カラチャ=マンディッチとザック・レヴィンに謝意を表す。

【編注】
1)65歳以上の高齢者や障害者を対象とした米国の公的医療保険制度メディケアの医療保険プランの一つ。メディケアが認可した民間医療保険会社が運営するマネージドケア型のプランで、任意加入。
2)感染症の突発的な流行。特定の地域や集団における予測レベルを超えた感染例の増加を指し、短期間で人々に影響が及ぶおそれがある。


"Preparing Hospitals for the Next Pandemic," HBR.org, June 10, 2021.