危機対応できる病院システム

 出来高払い方式によって、病院が平時に高額サービスを優先することと、需要の急増に対応できないことは、まったく別の問題だ。以下に、病院が次の危機にどうアプローチすべきかについて、筆者らの所見を述べたい。

 第1に、病院のベッド数ではなく、患者サービスの観点で物事を考えることが必要だ。特定病院での増床は難しいが、病院以外の環境に入院治療を拡大することは可能であり、一時的であればなおのこと可能である。

 今後は多くの企業や組織で、高度なモニター、センサー、遠隔医療、そして看護師や医師助手などの柔軟な労働力を利用し、場合によっては患者の自宅にも、遠隔集中治療を提供できるようにならなくてはいけない。

 医療保険会社のヒューマナや、患者の遠隔モニタリングサービスを提供するオランダのフィリップスを筆頭に、大手企業が巨額の投資を行い、この「在宅復帰」分野に参入している。

 第2に、病院を個別の医療提供者ではなく、国の緊急サービスを提供するシステムの一部としてとらえる必要がある。その意味で、病院を銀行に例えることができる。銀行は、互いに競争しながら、危機を回避するために協力し合ってもいるからだ。

 たとえば、銀行は流動性クランチに直面した時、互いに資金を融通し合う。米国証券取引委員会(SEC)の透明性要件に応じることで、セクター全体でマクロ経済的ニーズに適応できている。こうした市場構造のおかげで、銀行は、預金引き出しの急増や地域における突発的な経済的需要のように、資金需要が突然増加する局面に対応しやすくなっている。

 病院も、同様のセーフティメカニズムを適用できる。相互の患者紹介システムによって、逼迫した病院から余裕のある病院へ患者を分散させることが可能になる。情報システムを整備し、病院が近隣の病院の収容能力や制約、人工呼吸器や個人防護具(PPE)といった特定の機器や資材の稼動状況を判断できるようにする必要がある。

 米国保健福祉省(HHS)はおそらく、この種の情報を普及させることの価値を認識しているだろう。なぜなら、2020年12月に病院レベルの収容能力データの公開を開始しているからだ。

 ところが、コロナ禍のほとんどの期間はこの情報がなく、2020年は患者数の増加傾向を実際よりも高く見積もったために資材の過剰在庫を抱えた病院も多く、反対に低く見積もったために廊下やその他の不適切な場所で必死に集中治療を提供した病院も多かった。

 第3に、医療保険サービスを提供する会社や組織は、自社が契約している医療機関が危機に備えて、救急医療を確保できることを保証すべきだろう。そのためには、たとえば、病院や他の医療提供者に、需要が急増した場合のコンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)を提出させる。

 一部のメディケア・アドバンテージ・プラン[編注1]に、エピデミック[編注2]への対応力を備えた医療ネットワークが含まれると宣伝すれば、高齢者の興味を引きつけられる可能性がある。また、この能力を保証することは、地域の病院や他の医療提供者に、緊急時の集中治療対応能力の増強を促すことにもつながるはずだ。