●メンタルヘルスを優先する

 米国の雇用主を対象とした調査では、メンタルヘルスに関するリソースへのアクセス改善を優先事項だと回答したのは、わずか31%だった。メンタルヘルスの改善は個人的なものだが、そのプロセスは、同僚、上司、チーム、組織によるサポートといった構造要因に影響されることを忘れてはならない。

 企業のリーダーは、メンタルヘルスに関する啓蒙と行動を促進する義務がある。女性は男性に比べ、デリケートな問題やワークライフの課題についての考えを同僚と共有することに抵抗を感じる割合が25%高い。

 特に黒人女性は長年、職場で深刻化する困難に直面してきた。

 黒人女性の半数は、自分の性別や人種が職場で「たった一人」だと答えている。また、筆者らの調査では、黒人女性は他の人種や民族の従業員よりも、自分の悲しみや喪失感について同僚と話すことに抵抗を感じる傾向が高く、「仕事に全身全霊を打ち込む」と答える傾向が低いことが示されている。さらに、黒人女性はチーム内に強い味方がいないと答える割合が1.7倍だ。雇用主は、批判のない対話を可能にする文化を育む努力をしなければならない。

 経営陣が従業員のメンタルヘルスへの取り組みを率直に語り、それを裏付ける有意義な行動をとることで、従業員は安心して必要なサポートを求めることができる。また、ビジネスや人材開発に関する優先事項と同様に、アカウンタビリティが重要だ。従業員のウェルビーイングに責任を持つシニアリーダーを置いている企業では、福利厚生に満足している従業員の割合が高い。

 毎年の健康診断や業績報告のように、年に一度、メンタルヘルスの自己評価を行うことを従業員に推奨することもできる。これは、各従業員が立ち止まり、プロセスの指針となるリソースを活用して、自身の精神的なウェルビーイングを評価するものだ。

 ●職場の規範を見直す

 新型コロナウイルス感染症は、従業員が仕事と家庭の間に明確な境界線を引くことをいっそう困難にし、多くの従業員が「常にオン」の状態にあると感じている。これは特にワーキングマザーに言えることで、最近の別の調査では、家庭に子どもがいる回答者の2人に1人が、職場に戻ることでメンタルヘルスに悪影響が及ぶと答えている。

 子どもを持つ従業員が燃え尽き症候群に陥るのを防ぎ、職場に戻る支援をするには、仕事のペースを持続可能なものにすることが不可欠だ。企業は、仕事とプライベートの境界線を再構築する方法を模索し、どのような柔軟な働き方を続けることができるのかを伝えなくてはならない。

 しかし、柔軟な働き方ができる場合でも、それを利用することに対するスティグマ(負の烙印)があるのではないかと懸念する従業員もいる。

 上層部が従業員のメンタルヘルスに取り組む姿勢を率直に語り、有意義な行動によってそれを裏付けることで、組織は従業員が安心して必要なサポートを求めるようにできる。さらに言えば、リーダーはみずからの生活における境界線を設定し、セルフケアを行うことで、サポートと持続可能性を優先してもよいのだというメッセージを従業員に伝えることができる。