エコシステムのアプローチにより
競争優位がどのように生まれるのか

 ポートフォリオをビジネスエコシステムとして形成することで、PE投資家は財務業績の直接的な向上にとどまらず、さまざまな競争優位を確保できる。

 その一つとして、ソーシング(買収案件の発掘)と価格の面で優位が得られる。たとえば、ファミリービジネスは、PEファームの投資先企業と協調・連携することで活動を補完され、イノベーションの向上や成長の加速、市場でのポジション保持が可能になる。したがって、ファミリービジネスへの投資を検討しているPEファームは、連携を通じて、ほかの買収者候補よりもはるかに多くの価値をオーナーファミリーにもたらすはずだと説得することで、買収価格を大幅に引き下げることができる。

 もう一つの競争優位はオークションで生じ、PEファームは入札でライバルよりも優位に立てる。既存の投資先事業群から成るエコシステムを通じて、投資の価値を高める独自の計画を持っているため、その投資案件により多くの金額を提示することが正当化されるのだ。PEファームは、このエコシステムの手法と財務レバレッジの向上を組み合わせれば、事業会社による買収――彼らはごく自然に相乗的なエコシステムを形成する――に対する競争力を強めることにもなる。

 加えて、この価値創出システムは「アルファ」(投資成果がベンチマークを上回るアウトパフォーマンスを意味する業界用語)の大きな源泉にもなる。30件のバイアウト事例に関するデータから筆者らが得た結果によれば、ポートフォリオのエコシステムを通じて収益成長率が平均で5%でも伸びれば、アルファ(この場合は業界平均を超える収益成長率)を達成する確率は50%増える。したがってこのシステムは、PEの生む価値に膨大なインパクトをもたらし、公開株の利益率といった主要指標を上回るリターンにつながるのだ。

 以上を総合すると、PEのリスク・リターン・プロファイルは大幅に強化することができる。

 筆者らが気づいた重要な点として、価値を創出するポートフォリオ横断的な関係性は、投資先事業が売却された後でも維持できる場合が多く、そのため売却価格の引き上げが可能になる。それでもポートフォリオのリスクが高まることはない。投資先企業は自律的な経営を維持し、親会社による分離を妨げるような形でつながってはいないからだ。

 PE業界が成熟する中、個々の企業に焦点を当てるのとは対照的に、エコシステムの視点を取り入れることで、PE投資による価値創出の可能性は大きく広がる。課題はあるものの、補完的な事業同士、または何らかの特性を共有する事業同士を結びつけることで、多大かつ持続可能な価値を引き出すことができる。

 この水平思考を実行に移すには、PEファームはエコシステムのまとめ役(オーケストレーター)になる必要がある。新しい組織構造、システムの調和、新たなスキル、報酬制度の変更、事業間で連携する文化を歓迎しなければならない。業界利益が時とともに縮小を続ける中、ポートフォリオのパフォーマンスを最大化するためにエコシステムを築くPEの革新者は、優れた競争優位を確保できるのだ。


"Private Equity's Mid-Life Crisis," HBR.org, June 09, 2021.